店舗・施設のLEDテープ照明は、全灯一括のON/OFFで納めてしまうと「営業中はカウンターだけ暗くしたい」「閉店後はファサードだけ残したい」という要望に応えられず、開店後の手直し(=再開口・再配線)になります。あとから系統を分けるのは新設の3倍手間が掛かるため、ゾーン分けは配線前の設計段階で決めるのが鉄則です。本記事では、ゾーンの切り方、電源を分けるか分岐するかの判断、ゾーンごとの電流計算と保護、多チャンネル調光器の選定、増設に強い仕込みを施工業者向けに整理します。

ゾーンの切り方:用途×時間帯×色温度で分ける

ゾーン分けは「部屋割り」ではなく「点け方・消し方が違うグループ」で切ります。判断軸は3つです。

  • 時間帯:営業中だけ点ける/閉店後も点ける(ファサード・防犯)/アイドルタイムに落とす
  • 用途:売場のベース演出/商品にフォーカスする棚・ショーケース/サイン・ロゴ
  • 色温度・調光:調光したいエリアと全点灯のままでよいエリア、調色(電球色⇔昼白色)を使うエリア

ゾーン分割の設計例(小型物販店・LEDテープ合計30m)

ゾーン内容テープ負荷計算(24V)制御
Z1 売場コーブ天井間接照明 18m9.6W/m 調色172.8W ÷ 24V = 7.2A調光2ch(CCT)・営業中のみ
Z2 カウンター・棚下レジ裏+陳列棚 6m9.6W/m 単色57.6W ÷ 24V = 2.4A調光1ch・アイドルタイム減光
Z3 ファサード庇下サイン 6m14.4W/m 単色86.4W ÷ 24V = 3.6AON/OFFのみ・照度センサー+タイマーで深夜まで

このようにゾーンごとに「W合計 → 電流」を出しておくと、後述の電源容量・ヒューズ・ケーブル選定がすべてこの表から決まります。電流 = 合計W ÷ 電圧(24V系なら24)です。

ゾーン数の目安:小型店舗で3系統(売場/什器・カウンター/ファサード)、飲食店で4系統(客席/テーブル・カウンター/厨房・バックヤード/外装)が実務の標準形です。迷ったら「閉店後に残すもの」と「調光するもの」を独立させれば大きな失敗はありません。

電源を分けるか、1台から分岐するか

回路分割の最初の分かれ道です。判断基準を比較表にまとめます。

方式構成長所短所・条件
A. 系統別電源(原則)ゾーンごとに専用電源を近接配置し、AC側で入切1台故障しても他ゾーンは生きる/DC配線が短く電圧降下に強い/ゾーンごとに入切方式を変えやすい電源台数が増える。AC側の渡り配線が必要(電気工事士施工)
B. 大容量1台から分岐電源1台 → 分岐端子台 → 各ゾーンへDC送り電源が1台で済む/制御ボックスに集約でき保守が楽電源故障で全滅/分岐ごとのヒューズ必須/DC送りが長いと電圧降下。合計150W以下・同一室内が目安
C. 折衷(グループ別電源)近接ゾーンをまとめて中容量電源、離れたゾーンは別電源台数と信頼性のバランスが良い。中規模店舗の標準解グループ内はB方式の注意点がそのまま適用される

B方式の絶対条件=分岐ヒューズ:大容量電源は短絡時に定格いっぱいの電流(350W級なら約15A)を流し続ける能力があります。無ヒューズ分岐の1本が短絡すると、細いテープと配線がヒーターになり焼損・発煙に至ります。分岐ごとにゾーン定格電流の1.5〜2倍のヒューズ(Z2なら2.4A×1.5≒4A程度)を必ず入れてください。詳細はヒューズ・回路保護ガイドを参照。

電源容量の決め方(ゾーン単位)

電源容量 ≧ ゾーン合計W × 1.3(余裕率30%)。上の設計例ならZ1は172.8W×1.3≒225W → 240W級、Z2は57.6W×1.3≒75W → 100W級、Z3は86.4W×1.3≒112W → 120W級を選定します。電源の配置は「テープの近くに置いてAC側を延ばす」が原則です(電源配置ガイド容量計算ガイド参照)。

制御方式:ON/OFF系統と調光系統を分けて考える

ON/OFFだけのゾーン

  • 壁スイッチでAC一次側入切:最も単純で故障が少ない。系統ごとに片切スイッチ(片切配線ガイド参照)
  • センサー・タイマー:ファサードは照度センサー+タイマーの自動運転が定番
  • 多数台の一括入切:電源4台以上をまとめて切るならマグネットスイッチ(電磁接触器)経由(一括入切ガイド参照)

調光するゾーン

必要チャンネル数は「独立調光したいグループ数×テープ種別の消費ch」で数えます。

単色テープ 1ch/ゾーン 白1色・カラー1色。PWM調光器の1出力を使用
調色(CCT)テープ 2ch/ゾーン 電球色+昼白色の2回路。詳細は調色配線ガイド参照
RGB / RGBW 3〜4ch/ゾーン 演出ゾーンのみに限定するとch数と配線量を抑えられる
予備ch +1〜2ch 将来の区画変更・増設用。ch満杯の機種選定は避ける

調光ゾーンが3系統を超える・他照明(ダウンライト等)と一括シーン制御したい場合は、単体調光器の寄せ集めではなくDALI・DMXなどの制御プロトコルでの統一を検討します(調光方式の比較DALI配線ガイドDMX/SPI比較参照)。

明るさが揃わない罠:同じテープでもゾーンごとに違うメーカーの調光器を使うと、調光カーブの違いで「同じ50%設定なのに隣のゾーンより明るい」が起きます。調光ゾーンは同一シリーズの多チャンネル機でまとめるのが原則です。複数系統の明るさ差の診断は明るさ不一致ガイドを参照してください。

増設に強い仕込みと竣工時の残しもの

ゾーン設計の価値は開店後に出ます。増設・区画変更を「空き端子に繋ぐだけ」にする仕込みは次の4点です。

  • 制御ボックス(電源・調光器・端子台の集約場所)に1〜2回路分のブランク端子台と物理スペースを残す
  • 電源容量・調光器chに30%以上の空きを持たせる(満杯設計にしない)
  • 全DC配線の両端に系統札(Z1・Z2…の回路番号ラベル)を付ける
  • 竣工時に1枚もの系統図(ゾーン・電源・調光ch・ヒューズ値・ケーブルサイズ)を残す

端子台まわりはネジ式よりWAGO等のレバー式が増設時の作業性で有利です(端子台ガイド参照)。配線の色分け・極性管理は配線図ガイドにまとめています。

竣工検査でのアピール:系統図+回路番号ラベルが揃っている現場は、施主・元請けからの信頼が段違いです。「どのブレーカーでどのゾーンが落ちるか」を検査立ち会いでその場で示せると、追加工事の指名にも繋がります。

よくある質問

1台の大容量電源から複数ゾーンへ分岐する設計にしてもよいですか?
小規模(合計150W以下・2〜3ゾーン・同一室内)なら実用的ですが、条件が2つあります。①分岐ごとに必ずヒューズを入れること。大容量電源は短絡時に数十Aを流し続ける能力があるため、無ヒューズの分岐1本の短絡でテープの焼損・発煙に至ります。分岐ヒューズは各ゾーン定格電流の1.5〜2倍を目安に選定します。②電源故障時に全ゾーンが同時消灯するリスクを許容できるか確認すること。営業に直結するファサード看板と店内演出照明を同じ電源にぶら下げると、電源1台の故障で両方消えます。中規模以上・エリアが離れている・重要度が異なる場合は、ゾーンごとに電源を分ける系統別電源方式が原則です。
ゾーンごとに明るさを変えたい場合、調光器は何チャンネル必要ですか?
「独立して明るさを変えたいグループの数=必要チャンネル数」です。単色テープならゾーン1つにつき1ch、調色(CCT・電球色〜昼白色)テープは1ゾーンで2ch、RGBは3ch、RGBWは4chを消費します。例えば「売場コーブ(調色)+カウンター(単色)+ファサード(単色)」なら2+1+1=4chです。将来の区画変更に備えて1〜2ch余らせた機種を選ぶのが実務的です。なお同じ調光値でも複数メーカーの調光器が混在すると調光カーブの違いで明るさが揃わないため、全ゾーンを同一シリーズの多チャンネル機でまとめるか、DALI/DMXなど共通プロトコルで統一してください。
開店後にゾーンを増やせるようにしておくには、何を仕込んでおけばよいですか?
後から一番困るのは配線経路と電源容量です。①電源・調光器を集約する制御ボックス(ウォールボックス・点検口内スペース)に予備スペースを確保し、ブランクの端子台を1〜2回路分設けておく。②幹線となるAC100V・DC24Vの送り配線に予備の空き容量(電源容量の30%以上)を残す設計にする。③各ゾーンへの配線に系統札(回路番号ラベル)を付け、竣工時に系統図を1枚残す。④調光器はチャンネルに空きがある機種を選ぶ。この4点を仕込んでおくと、増設時は「テープを貼って空き端子に接続するだけ」で済みます。系統図がないと、増設のたびに全回路の追跡調査から始まり半日仕事になります。

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