オフィスや商業施設・ホテルのLED照明を一括で調光・シーン制御したい——そんな案件で指定されるのがDALI(ダリ)調光です。ところが現場では「制御線はどう配線するのか」「極性はあるのか」「何台までつなげるのか」「0-10V調光と何が違うのか」で手が止まりがちです。DALIは2本の制御線をバス状に渡していくだけのシンプルな配線ですが、総延長・接続台数・電源装置・絶縁区分に明確なルールがあり、ここを外すと調光不良や信号エラーになります。本記事では、DALIの配線方法と他方式との違い、アドレス設定の考え方を電気工事業者向けに整理します。LEDテープ側の調光方式の全体像はLEDテープの調光方式ガイドも参照してください。
現場あるある: 「DALIの信号線を弱電と一緒に細線で長々と引いたら、末端の器具だけ調光が効かない」。原因はバスの電圧降下と総延長オーバー。DALIは配線が簡単な分、300m・64台・電源容量の上限を最初に押さえるのが結局いちばん早い。
DALIとは(デジタルアドレッサブルの調光規格)
DALI(Digital Addressable Lighting Interface)は、IEC 62386で規格化されたLED照明用のデジタル調光・制御の通信規格です。アナログ調光(0-10Vなど)が「電圧の高低で一律に明るさを変える」のに対し、DALIは器具1台ごとにアドレスを持たせ、デジタル信号で個別に指示できます。さらに、各器具から点灯状態や球切れ・故障情報を双方向で取得できるのが大きな違いです。
- 個別制御: 1バスに最大64台、各器具を1台ずつ調光・点滅できる。
- グループ/シーン: 16グループ・16シーンを設定でき、配線を変えずにソフト上で組み替え可能。
- 双方向通信: 球切れ・故障・点灯時間を中央で監視できる(保守・BEMS連携向き)。
- DALI-2: IEC 62386 第2版。制御機器(センサー・スイッチ)まで標準化され、メーカー間の相互接続性が向上。
DALIの配線方法(極性フリー2線バス)
DALIの制御配線は2線(DA/DA)の極性フリーです。0-10Vのような+/-の区別がなく、どちらの線をどちらの端子へ繋いでも動作するため、結線ミスによる故障を減らせます。配線トポロジーはバス(数珠つなぎ)・スター・ツリーいずれも可で自由度が高い反面、ループ(リング状に最初と最後をつなぐ)だけは不可です。実際の敷設では、電源3線(L/N/E)+DALI2線の5芯ケーブルを1本で引き回すのが一般的です。
| 項目 | DALI仕様(IEC 62386) |
|---|---|
| 制御線 | 2線(DA/DA)・極性フリー(無極性) |
| バス公称電圧 | 約16V DC(規格上 9.5〜22.5V の範囲) |
| 最大バス電流 | 250mA(1バス/1電源装置あたり) |
| 接続台数 | 最大64台(個別アドレス)/1バス |
| グループ/シーン | 最大16グループ/最大16シーン |
| 最大総延長 | 300m(バス上の電圧降下 2V 以内に収めること) |
| 推奨線径(目安) | 〜100m:0.5mm² / 〜150m:0.75〜1.0mm² / 〜300m:1.5mm² |
| 電源 | DALIバス電源装置(バスパワーサプライ)が別途必要 |
| トポロジー | バス/スター/ツリー可・ループ(リング)不可 |
電圧降下に注意: DALIの信頼性を左右するのは「総延長」と「線径」です。バス上の電圧降下が2Vを超えると末端の器具が信号を正しく受け取れず、その器具だけ調光が効かない・反応が遅いといった症状が出ます。長距離になるほど太い線径を選び、300mを超える場合はバスを分割して電源装置を増設します。考え方はLEDテープの電圧降下ガイドと同様です。
DALI / 0-10V / PWM / 位相制御の違い
調光方式は現場の規模・既設配線・求める制御粒度で選びます。DALIは高機能な分コストと設計の手間がかかるため、必ずしも全案件で最適とは限りません。代表的な4方式を比較します。
| 比較項目 | DALI | 0-10V / 1-10V | PWM | 位相制御(トライアック) |
|---|---|---|---|---|
| 制御線 | 2線・極性フリー | 2線・極性あり(+/-) | 調光器→ドライバ/テープ | 既設AC2線 |
| 個別制御 | 可(最大64台アドレス) | 不可(グループ一括) | チャンネル単位 | 不可(回路一括) |
| 双方向通信 | 可(状態・故障取得) | 不可 | 不可 | 不可 |
| 調光下限の目安 | 0.1%〜(機種による) | 1〜10% | 〜0.1% | 機種依存・ちらつき注意 |
| 後からの再グループ | 設定変更で容易 | 配線変更が必要 | 配線/ch依存 | 不可 |
| 主な用途 | ビル・オフィス・大規模/保守重視 | 倉庫・体育館等の単純調光 | LEDテープ・装飾照明 | 住宅・既設改修 |
※調光下限・最大台数は機器の仕様により異なります。採用する器具・ドライバのデータシート値を必ず確認してください。
アドレス・グループ・シーン設定
DALIの強みは、配線後にソフト(コミッショニング)で制御を組み替えられる点です。施工と制御設計を分離できるため、レイアウト変更にも配線変更なしで追従できます。
- 個別アドレス(0〜63): コントローラまたは設定ツールで各器具へ自動/手動でアドレスを割り当てる。
- グループ(0〜15): 「窓側」「廊下」などを1つのグループにまとめ、一括調光。1台を複数グループに重複所属も可。
- シーン(0〜15): 「会議」「プレゼン」「清掃」など、各器具の明るさの組み合わせをプリセット保存し、ワンタッチで呼び出す。
施工上の注意(資格・絶縁区分)
DALIの制御線は弱電のように見えますが、施工上は注意が必要です。
- SELVではない: DALIバスは安全特別低電圧(SELV)として保証された回路ではありません。商用電源と同じ配線ルートを通る前提で、低圧屋内配線(基礎絶縁)と同等に扱います。信号線を裸で他の弱電と束ねるのは不可。
- 電気工事士の領域: 一次側(AC100/200V)の結線とDALI電源装置の設置を伴うため、電気工事士の資格が必要な作業です。
- 電源装置の容量設計: 接続する制御機器(ゲア・センサー・スイッチ)の消費電流合計が、バス電源の250mA以内に収まるよう設計する。
- 混在に注意: 同一バスに非対応機器を混ぜない。DALIとDALI-2の組み合わせや、メーカー独自拡張がある機器は事前に相互接続性を確認する。
選定のヒント: 「1台ごとの故障監視・シーン制御・将来のレイアウト変更」が要件ならDALI、「数グループの単純な明るさ調整で十分・初期コスト最優先」なら0-10Vが堅実です。テープライトの装飾調光だけならコントローラー・調光器ガイドのPWM系が手軽です。
DALI配線・選定チェックリスト
- 接続台数が1バス64台(アドレス0〜63)以内に収まるか確認した
- バス総延長が300m以内・電圧降下2V以内に収まる線径を選んだ
- 電源3線+DALI2線の5芯ケーブルで敷設区分を統一した
- DALIバス電源装置(250mA)の容量に接続機器の消費電流が収まるか確認した
- トポロジーはバス/スター/ツリーとし、ループ(リング)にしていない
- 制御線をSELV扱いで裸敷設せず、低圧屋内配線と同等に施工した
- グループ・シーンの割り付け(コミッショニング)方針を施主と合意した
- DALI/DALI-2・メーカー独自拡張機器の相互接続性を事前確認した
まとめ — 配線はシンプル、設計で差が出る
- 配線は極性フリー2線+電源: 5芯ケーブルでバス状に渡すだけ。結線ミスに強い。
- 上限を最初に押さえる: 64台・300m(電圧降下2V)・電源250mAが設計の3本柱。
- 0-10Vとの住み分け: 個別制御・故障監視・シーンならDALI、単純調光・低コストなら0-10V。
- SELVではない: 低圧屋内配線と同等に扱い、電気工事士が施工する。