フルカラー(虹色・流れる・追従)演出ができるLEDテープには、大きく分けてDMX512制御とSPI制御(アドレサブル/ピクセルLED)の2方式があります。見た目の演出は似ていても、配線本数・伝送できる距離・必要な器材・コストがまったく異なり、選定を誤ると「現場で信号が届かない」「他の照明設備と統合できない」といったやり直しが発生します。このページでは施工業者が見積・設計段階で判断できるよう、2方式の違いを数値で整理します。
1. DMX512とSPI(アドレサブル)の基本
DMX512は舞台照明・建築化照明の業界標準プロトコルで、RS-485という差動信号でデータを送ります。1系統(ユニバース)あたり512チャンネルを持ち、LEDテープを点灯させるには「DMXデコーダー」を介してテープに電力と色信号を分配します。調光卓・施設の照明制御盤・他社のムービングライト等と同じDMXラインに乗せられるのが最大の強みです。
SPI(アドレサブル/ピクセルLED)は、テープ上の各ICチップ(WS2812B・WS2815・SK6812等)が自分宛のデータを受け取り、残りを次のチップへ送るバケツリレー方式です。1ピクセル単位で色を制御でき、コントローラー1台でテープを直接駆動できるためコストが安く、什器・サイン・装飾の細かい演出に向きます。一方で信号が一方向のバケツリレーのため、距離が伸びると波形が崩れデータ化けが起きやすいという弱点があります。
2. 2方式の比較表
| 比較項目 | DMX512制御 | SPI制御(アドレサブル) |
|---|---|---|
| 信号方式 | RS-485差動(ノイズに強い) | シングルエンド・バケツリレー |
| 伝送距離(信号) | 数十m〜(中継で数百m) | 先頭まで3〜5m目安 |
| 必要器材 | DMXコントローラー+デコーダー | SPIコントローラーのみ |
| ピクセル細かさ | デコーダー単位(数素子をまとめて制御) | 1ピクセル単位 |
| 初期コスト | 高い(デコーダー台数分) | 安い |
| 他設備との統合 | 調光卓・制御盤と統合容易 | 独立系統になりがち |
| 配線の引き回し耐性 | 長距離・分岐に強い | 長距離でデータ化けしやすい |
| 向く用途 | 建築化照明・施設・舞台 | 什器・サイン・短距離装飾 |
3. 案件タイプ別の選び方
DMX512を選ぶべき案件
設備統合・長距離・信頼性が要る現場。
- 調光卓・制御盤と統合する建築化照明
- 信号を数十m引き回すファサード・橋梁
- 舞台・イベントで他の灯体と同期
- 長期運用・保守性を重視する施設
SPIを選ぶべき案件
1ピクセルの細かい演出を低コストで。
- 什器・棚・サインの流れる演出
- コントローラー近傍に収まる短距離
- 1台で完結させたい小規模装飾
- 追従点灯・虹色アニメーション主体
DMX入力のSPIデコーダー
DMXで受けてピクセル変換する器材も。
- 幹線はDMX(長距離・統合)
- 末端でSPIテープを駆動
- 長距離とピクセル演出を両立
- 器材選定・アドレス設計が必要
判断の起点: 「他の照明設備・調光卓と同じ操作系に乗せるか?」がYESならDMX512、「このテープ単体で細かい演出を安く出したいか?」がYESならSPI、と最初に切り分けると見積がぶれません。
4. DMX512の配線・チャンネル設計
配線の基本手順
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デイジーチェーン(数珠つなぎ)で配線する コントローラー → デコーダー1 → デコーダー2 …と一筆書きでつなぎます。スター配線(途中分岐)は信号反射の原因になるため避けます。
分岐が必要な場合はDMXスプリッター(光絶縁分配器)を使用します。
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各デコーダーに開始アドレス(DMXアドレス)を設定する RGBデコーダーは1台3ch消費します。1台目=ch1、2台目=ch4、3台目=ch7…と重複しないように割り当てます。アドレス重複は「複数のテープが同じ動き」になる典型ミスです。
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信号線は2芯シールド(推奨120Ω特性)を使う DMXは本来120Ω特性インピーダンスのケーブルが規格です。汎用VVFや細い線で長距離を引くと波形が乱れます。
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バス最終機器に120Ωの終端抵抗を入れる 終端がないと反射でちらつき・暴走が出ます。長距離・多台数ほど終端の有無が効いてきます。
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デコーダーの電源容量とテープのW数を合わせる デコーダーは「信号変換+電力スイッチ」です。各chの許容電流(例: 1ch 4A)を超えるテープ長を接続しないよう、テープのW/mから電流を計算します。
チャンネル計算の例: RGBデコーダー(3ch/台)を10台使う場合、消費は3ch×10=30ch。1ユニバース(512ch)に十分収まります。RGBW(4ch/台)なら4ch×台数で計算します。ユニバースを超える規模はDMXユニバースを分割(複数ライン化)します。
5. SPIの配線・伝送距離の注意点
SPI特有の3つの落とし穴
| 落とし穴 | 原因 | 対策 |
|---|---|---|
| 先頭まで届かずデータ化け | コントローラー〜先頭ピクセルの信号線が長い | 信号線は3〜5m以内/差動方式(WS2815等)採用/信号アンプ挿入 |
| 後半が暴走・色化け | テープ長による電圧降下でICが誤動作 | パワーインジェクション(数m毎に電源注入)で電圧を維持 |
| 最初の数ピクセルだけ白く点く | 信号品質不足・GND未共通 | 信号GNDと電源GNDを必ず共通化/先頭に330Ω程度の直列抵抗 |
WS2812B系とWS2815系の違い: WS2812Bは5V・1本の信号線。WS2815は12V駆動でバックアップ信号線を持ち、1ピクセル故障しても以降が消えにくく、長距離の信号安定性も高めです。長めの引き回し・信頼性重視ならWS2815系を検討してください。
6. ちらつき・暴走など制御トラブルの対処
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DMXでテープが不規則にちらつく 原因: 終端抵抗なし・ケーブル不適合・スター配線。まず120Ω終端の有無を確認、次にデイジーチェーン化、それでも出る場合はDMXスプリッターで系統を分ける。
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複数のテープが同じ動きをする 原因: DMXアドレスの重複設定。各デコーダーの開始アドレスが3ch(RGB)または4ch(RGBW)刻みで重複していないか確認して再設定する。
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SPIで先頭から数十cmで色が崩れる 原因: 信号GNDと電源GNDが共通化されていない、または信号線が長すぎる。GND共通化と信号線短縮を行い、必要なら先頭に直列抵抗・信号アンプを挿入する。
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SPIテープの後半だけ暗い・暴走する 原因: 電圧降下によるIC誤動作。テープ後半へパワーインジェクション(電源を数m毎に追加注入)し、定格電圧を維持する。
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7. 制御方式選定チェックリスト
- 他の照明設備・調光卓と同じ操作系に統合する必要があるか確認した(YES→DMX有利)
- コントローラーから先頭ピクセル/デコーダーまでの信号距離を実測した
- SPIの場合、信号引き回しを3〜5m以内に収められるか検討した
- DMXの場合、デコーダー台数×chがユニバース(512ch)に収まるか計算した
- DMXバス最終機器に120Ω終端抵抗を入れる計画にした
- テープのW/mから電流を計算し、デコーダー/電源容量に余裕を持たせた
- SPIは信号GNDと電源GNDの共通化を配線図に明記した
- 長距離・電圧降下区間にパワーインジェクションを計画した