店舗の間接照明をフロア一斉に、倉庫の通路LEDを一括で、看板のLEDを開店と同時に——。複数台のLED電源を1つのスイッチでまとめてON/OFFしたいという要望は、規模の大きい現場ほど必ず出てきます。ところが、安易に壁スイッチへ電源を何台も直結すると、点灯のたびに突入電流(インラッシュ)で接点が溶着し、ある日スイッチを切っても消えなくなる——という事故が起こります。本記事では、電磁接触器(マグネットコンタクタ)・パワーリレー・SSRを使い、多回路のLED電源を安全に一括ON/OFFする配線の組み方を、接点容量の選定計算と突入対策まで含めて施工業者向けに整理します。
先に結論: 多数のLED電源を1スイッチで操作するなら、「小さな信号で操作する操作回路」と「電源へ電力を送る主回路」を分け、主回路の開閉は余裕のある接点容量を持つ電磁接触器やリレーに任せるのが基本です。接触器自体は突入電流を減らさないため、時差投入やインラッシュ抑制と必ずセットで設計します。
なぜ壁スイッチに電源を直結してはいけないのか
LEDテープを駆動するスイッチング電源(PSU)は、投入の瞬間に内部の平滑コンデンサを一気に充電するため、定格入力電流の10〜60倍にもなる突入電流が1〜数ミリ秒だけ流れます。1台では一瞬でも、複数台を同じスイッチで同時に投入すると、この突入電流が合算されて接点に集中します。
- 接点アーク・溶着:一般的な埋込壁スイッチの定格は15A前後ですが、これは連続通電の値で、繰り返しの大きな突入には弱く、開閉のたびに接点がアークで荒れ、やがて溶着して「切っても消えない」状態になります。
- ブレーカートリップ:突入電流の合計が分岐ブレーカーの瞬時遮断レベルを超えると、点けた瞬間に落ちます(詳しくはLED電源の突入電流とブレーカー対策を参照)。
- 寿命の偏り:壁スイッチは本来こんな大電流の開閉を想定していないため、見た目は問題なくても内部接点だけが急速に劣化していきます。
これを避けるための定石が、「操作回路」と「主回路」を分離し、電力の入切は専用の開閉器に肩代わりさせるという考え方です。
基本構成:操作回路と主回路を分ける
一括点灯の回路は、役割の違う2つの回路で構成します。この分離が、安全と保守性の両方を生みます。
- 操作回路(弱い信号側):人が触る小型スイッチ・タイムスイッチ・人感センサー・PLCやコントローラーの接点など。ここには電磁接触器のコイルを駆動するだけのわずかな電流しか流れません。
- 主回路(電力側):電磁接触器・リレーの大きな主接点を通して、各LED電源(PSU)の1次側AC100/200Vへ電力を分配します。実際の大電流・突入電流はすべてこの主接点が受け持ちます。
こうすると、操作する側は小容量の安価なスイッチで済み、突入電流に耐える役目は接点容量に余裕のある開閉器に集約できます。タイマーやセンサーへの置き換え・増設も操作回路だけで完結し、主回路を触らずに改修できるのも利点です。
ワンポイント: 操作回路のコイル電圧(AC100V / AC200V / DC24V など)は、現場で用意できる制御電源に合わせて接触器を選びます。人感センサーやタイムスイッチと組み合わせるなら、それらの接点定格でコイルが駆動できるかも必ず確認します。
電磁接触器・リレー・SSRの使い分け
開閉器には大きく3種類あります。負荷の総容量・開閉頻度・静音性・予算で選び分けます。
| 開閉器 | 得意な規模 | 突入・溶着耐性 | 静音性 | 向く現場 |
|---|---|---|---|---|
| パワーリレー | 小(総数A程度) | 中(機械接点) | カチッと小音 | 電源数台の小規模・コスト最優先 |
| 電磁接触器(コンタクタ) | 中〜大(十数A〜) | 高(大接点・交換可) | 動作音あり | 店舗フロア・倉庫・看板の定番 |
| SSR(ソリッドステートリレー) | 小〜中 | 非常に高(無接点) | 無音 | 高頻度開閉・溶着厳禁・静音要求 |
電磁接触器(マグネットコンタクタ)
制御盤の定番。接点容量が大きく、消耗したら接点だけ交換できる機種も多いため、総容量が大きい現場の本命です。LED電源のような容量性・突入の大きい負荷は、抵抗負荷向けの使用負荷種別(AC-1相当)で余裕を持って選定し、後述の突入対策と併用します。
パワーリレー
電源が数台で総入力電流が小さいなら、安価なパワーリレーで十分です。接点定格(例:抵抗負荷16A など)と突入定格を確認し、連続・突入の両方で余裕を取ります。
SSR(ソリッドステートリレー)
機械接点が無いため溶着せず無音で、ゼロクロスタイプなら電圧ゼロ点で投入して突入を抑えられます。一方で発熱するためヒートシンクが必須、OFF時もわずかな漏れ電流がある点に注意します。1日に何百回も入切する・調光連動で頻繁に開閉する用途で威力を発揮します。
接点容量の選び方(計算式と数値)
選定は「連続電流」と「突入電流」を別々に確認します。どちらか一方だけで選ぶと失敗します。
例として、200WのLED電源を10台、AC100Vで一括制御する場合を考えます。
- 連続電流:1台あたり 200W ÷ 100V ÷ 0.9 ≒ 2.2A。10台で約22A。安全率1.25を掛けて約28A以上の接点定格が必要 → 連続定格に余裕のある電磁接触器を選定。
- 突入電流:1台で数十A級が瞬間的に流れ、10台同時なら合計が数百Aに達することも。接点定格だけでは追いつかないため、突入対策(次章)が前提になります。
| 制御したいLED電源の規模(合計連続) | 推奨開閉器 | 接点定格の目安 | 突入対策 |
|---|---|---|---|
| 〜5A(小型数台) | パワーリレー | 10〜16A級 | 原則必要、台数が少なければ簡略可 |
| 5〜20A(フロア1系統) | 電磁接触器 | 連続20〜25A級 | インラッシュ抑制 or 2分割時差投入 |
| 20A超(複数フロア・倉庫) | 電磁接触器を複数 | 系統ごとに余裕選定 | 2〜3グループに分け時差投入を強く推奨 |
突入電流対策(接触器とセットで必須)
繰り返しになりますが、接触器やリレーは突入電流を減らしません。「弱い壁スイッチを丈夫な大接点に置き換える」部品です。突入そのものを抑えるには、次のいずれか(または併用)を組み合わせます。
- インラッシュ電流制限器:各電源の1次側にNTCサーミスタや突入抑制回路を挿入し、投入時のピークを抑える。電源によっては内蔵品もある。
- 時差投入(オンディレイ):電源を2〜3グループに分け、各グループを別々の接触器で受け、オンディレイタイマーで数百ミリ秒〜数秒ずらして順に投入する。突入のピークが時間的に分散され、ブレーカーも落ちにくい。
- ゼロクロスSSR:交流電圧がゼロになる瞬間に投入することで、突入を構造的に小さくする。無音・無接点で溶着もしない。
- 開閉サージ対策:コイルや接点にサージキラー(バリスタ・スナバ)を入れ、開放時のサージで他機器(センサー・無線等)にノイズが乗るのを防ぐ。
注意: 主回路は1次側AC100/200Vの活線工事になります。電磁接触器・分電盤まわりの結線は電気工事士の有資格者が施工してください。容量計算・グループ分けの設計と、実際の結線・絶縁確認はセットで行います。
施工チェックリスト
- 全LED電源の最大入力電流を合計し、安全率1.25以上で接点定格を決めた
- 突入電流の合算を見積もり、対策(インラッシュ抑制/時差投入/SSR)を選定した
- 操作回路(スイッチ・タイマー・センサー)と主回路(電源への電力)を分離した
- 接触器のコイル電圧を現場の制御電源(AC100/200V・DC24V等)に合わせた
- 台数が多い場合は2〜3グループに分け、オンディレイで時差投入する構成にした
- コイル・接点にサージ対策を入れ、近接機器へのノイズ対策を確認した
- 主回路の結線は電気工事士が施工し、絶縁抵抗を測定した
よくある質問
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