店舗1区画程度なら電源(PSU)を1台置けば済みますが、複数フロア・長尺の間接照明・広い売場のようにLEDテープが建物全体へ広がる大規模施工になると、「電源を1か所にまとめるか(集中配置)」「エリアごとに分けて置くか(分散配置)」がコストとトラブルを大きく左右します。判断を誤ると、電圧降下で端が暗い・DC配線が太く高い・故障時に全系統が落ちる、といった事態に直結します。本記事では集中配置と分散配置の違い、電圧降下・配線コスト・保守性の比較、そして PSU 設置位置の決め方を施工の現場目線で整理します。
集中配置と分散配置とは
LEDテープの電源レイアウトは、大きく次の2方式に分かれます。
- 集中配置:PSU を電気室・盤・点検口などの1か所にまとめ、そこから各テープへ DC(低圧)配線で送る方式。
- 分散配置:AC(100V/200V)幹線を各エリアまで延ばし、各エリアの近くに小型 PSU を置いてその場で DC 化する方式。
両者の本質的な違いは「電圧降下が起きやすい DC 側の配線距離をどれだけ短くできるか」にあります。集中配置は DC を長く引き、分散配置は AC を長く引いて DC を最短化します。AC 側は電圧が高く電流が小さいため電圧降下に強く、長距離を引きやすいのがポイントです。
覚え方: 「DC は短く、AC は長く」。電圧降下のボトルネックは常に DC 側。距離が伸びる現場ほど、DC を短くできる分散配置が有利になります。
集中配置 vs 分散配置 比較表
| 比較項目 | 集中配置(1か所に集約) | 分散配置(エリアごとに設置) |
|---|---|---|
| DC配線距離 | 長くなりがち | 短くできる |
| 電圧降下 | 不利(端が暗くなりやすい) | 有利 |
| DC電線コスト | 太線化で高くなりやすい | 細線で済みやすい |
| 保守・点検 | 1か所で完結し楽 | 複数箇所を回る必要 |
| 故障時の影響範囲 | 1台故障で広範囲が消灯 | 該当エリアのみ消灯 |
| 放熱・設置スペース | 1か所に発熱が集中 | 分散され熱がこもりにくい |
| 向いている規模 | 小〜中規模・配線が短い | 大規模・建物全体に分散 |
選定の早道: 「PSU からテープまでの DC 配線が短く収まる」なら保守が楽な集中配置。「テープが各所に散らばり DC が長くなる」なら分散配置。迷ったら電圧降下を計算し、許容内に収まる最短構成を選びます。
電圧降下で判断する — 距離の限界を計算する
どちらの方式を採るかは、感覚ではなく DC 側の電圧降下で決めます。電圧降下は次式で概算します(往復=行き帰りの2倍を考慮)。
電圧降下(V)≒ 2 × 配線長(m) × 電流(A) × 導体抵抗率(Ω/m)
※許容目安は一般に「定格電圧の数%以内」。例)24V なら降下を 1.2V(5%)程度に抑える。
同じ電力でも 24V 系は 12V 系より電流が半分になるため電圧降下に強く、同条件で約2倍の距離を引けます。長距離・大面積では 24V を選ぶのが基本です。下表は「DC 配線が長くなったとき」の対処の優先順位です。
| 状況 | 対処 | 効果 |
|---|---|---|
| DCが長く端が暗い | PSUをテープ近くへ(分散配置) | DC距離を根本から短縮 |
| レイアウト上PSUを動かせない | DC電線を太く(断面積UP) | 抵抗が下がり降下を抑制 |
| 1本のテープが長い | 両端/中間から給電(パワーインジェクション) | 給電点からの距離を半減 |
| 12V系で距離が足りない | 24V系へ変更 | 同条件で約2倍引ける |
計算の詳細はLEDテープの電圧降下 計算と対策ガイド、長尺給電のやり方はパワーインジェクション(電源分岐給電)ガイド、電線の太さは配線ケーブルの太さ選定ガイドを参照してください。
PSU設置位置を決める5つの判断軸
方式が決まったら、PSU の具体的な設置位置を次の順で詰めます。
- DC配線距離が最短になる位置:各テープの"重心"に近い場所を起点に検討。
- 放熱が確保できる場所:密閉ボックス内・断熱材の中・高温部の近くは避ける。風通しを確保。
- 点検・交換ができる場所:天井裏でも点検口からアクセスできる位置に。埋め殺しにしない。
- AC幹線・ブレーカーとの整合:各PSUの回路・容量・突入電流の合算がブレーカー許容内か確認。
- 水濡れ・結露を避ける:屋外・厨房・浴室近くは防滴ボックスや設置高さで対策。
見落としやすい点: 分散配置で複数 PSU を同一回路にまとめると、突入電流(インラッシュ)の合算でブレーカーが落ちることがあります。台数が増える分散配置では、突入電流対策を必ず設計に織り込んでください。詳しくはヒューズ・回路保護ガイドと突入電流でブレーカーが落ちる原因と対策へ。
電源容量は余裕率を見込む
集中・分散どちらでも、各 PSU は 負荷に対して余裕(ディレーティング)を取って選定します。常時フル負荷で使うと発熱・寿命で不利になるため、定格に対して負荷を抑えるのが定石です。
| 項目 | 目安 | 理由 |
|---|---|---|
| PSU負荷率 | 定格の70〜80%以下で運用 | 発熱・寿命・電圧安定のため |
| 必要容量の計算 | テープW/m × 総延長 ÷ 負荷率 | 余裕を見込んだ容量を確保 |
| 分散時の集約 | エリア負荷に合わせ小容量を複数 | 1台依存を避け影響範囲を限定 |
容量計算の手順は電源(PSU)の配線・接続ガイドと電源容量の計算ガイドで詳しく解説しています。
まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 集中配置 | 1か所集約。保守が楽。配線が短い小〜中規模向き |
| 分散配置 | エリアごとに設置。電圧降下・DC電線コストに有利。大規模向き |
| 判断軸 | DC配線距離。長いほど分散配置が有利 |
| 原則 | 「DCは短く、ACは長く」。24V系は距離に強い |
| 注意点 | 分散時は突入電流の合算でブレーカー対策を忘れない |
電源レイアウトは「配線距離 → 電圧降下 → 方式 → 設置位置」の順で決めれば失敗しません。最初に DC 距離を見積もる癖をつけると、端だけ暗い・電線が高い・故障で全消灯といった大規模施工特有のトラブルを未然に防げます。