施設概要
導入前の課題
焼肉店の照明環境は飲食業の中でも特殊な条件がある。炭火・ガスロースターから生じる油脂成分を含む煙(油煙)が常時発生し、換気が不十分な時間帯には照明器具の表面・内部に油脂が付着・堆積する。この環境下で以下の課題が積み重なっていた。
- 白熱灯の高発熱と高消費電力:席の雰囲気作りのために白熱電球60W×30灯を使用していたが、発熱量が多く夏場の店内温度を上げる要因にもなっていた。消費電力も大きく電気代を押し上げていた
- 油脂の器具への付着:テーブルロースターに近い位置の照明は油脂ミストが付着しやすく、1〜2ヶ月で白熱電球が黄ばみ・輝度が低下。定期的な拭き取り清掃とランプ交換が必要だった
- ランプ切れの頻度:白熱電球は平均寿命1,000時間(LED比で40分の1)。12時間/日稼働では2〜3ヶ月に1回のペースで切れ、30灯分の管理が煩雑だった
- 厨房の照度不足:食材確認・盛り付けに必要な照度が不十分で、調理スタッフから「肉の色が見えにくい」という声があった
- 電気代の高止まり:白熱灯中心の設備で月次電気代が重く、省エネ化の優先度が高かった
LED照明設計方針
焼肉店のLED照明設計は「食欲を刺激する温かみ」と「油煙環境での耐久性」の両立が鍵となる。2700Kの低色温度は炭火の赤みと調和し、焼き上がった肉の色艶を視覚的に引き立てる。演色Ra85で食材の「おいしそう」な見え方を確保した。
ゾーン別 LED 照明仕様
| ゾーン | エリア | 仕様 | 消費電力 |
|---|---|---|---|
| Zone A | 客席・テーブル席 (30席) |
COB8W/m × 80m Ra85 / 2700K(電球色・食欲促進) 油脂付着に配慮したアクセサリー配置 |
640W |
| Zone B | 厨房・ 調理準備室 |
COB10W/m × 30m Ra85 / 5000K(食材の色確認) |
300W |
| Zone C | 入口・ホール・ 会計カウンター |
COB6W/m × 20m Ra85 / 3000K |
120W |
| Zone D | バックヤード・ 倉庫・トイレ |
PIR人感センサー連動 COB6W/m × 15m Ra80 / 4000K |
22W実効 (PIR25%稼働) |
Zone A:客席・テーブル席 — 2700K・Ra85(焼肉の色艶を最大限に引き立てる)
30席の客席エリアはCOB8W/m × 80mを間接照明として設計した。2700Kの電球色は焼き立ての肉のツヤと赤みを視覚的に豊かに見せる色温度だ。白熱球60Wから置き換えることで、同等の温かみを維持しながら消費電力を大幅に削減できる。
油煙環境への対策として、テーブルロースター直上への照明設置を避け、天井の端寄りの配置にした。定期清掃(月1回のアルコール拭き取り)で器具表面の油脂を除去する運用とし、COBテープはアルミフレーム付きで清掃しやすい構造を採用した。
Zone B:厨房 — 5000K・Ra85(食材の色確認)
厨房はCOB10W/m × 30mで5000K昼白色を採用した。食材の鮮度確認・焼き加減の判断・盛り付けの精度向上のために、客席と厨房で色温度を使い分けることが重要だ。高演色Ra85で肉の色を正確に判別できる厨房環境を整えた。
Zone C:入口・ホール・会計カウンター
来客動線となるホール・入口は3000Kの中間色を採用。客席の2700Kより少し明るい印象で、視認性と温かみを両立した。会計カウンターでは金銭確認のために適切な照度を確保している。
Zone D:バックヤード・トイレ — PIR制御
倉庫・バックヤード・スタッフトイレはPIR人感センサーを導入し、入室時のみ点灯する省エネ制御とした。実効稼働率25%(1日あたり3時間程度の有人状態)で電力消費を大幅に削減した。
省エネ効果・投資回収シミュレーション
| 項目 | 旧設備(白熱灯+蛍光灯) | 新設備(COB LED) | 削減効果 |
|---|---|---|---|
| 総消費電力 | 3,190W | 1,082W実効 | ▲2,108W |
| 年間電力消費 | 13,952kWh | 4,750kWh | ▲9,202kWh |
| 年間電気代(25円/kWh) | 約349,000円 | 約119,000円 | ▲約230,000円 |
| 省エネ率 | — | 66%削減 | |
投資回収計算
導入後の変化
- 電気代66%削減:月次の電気代明細が大幅に改善。照明だけで月約1.9万円の削減効果が確認された
- ランプ交換ゼロ:白熱球を月に10本以上交換していた作業がなくなり、スタッフの管理負担が大幅に軽減された。球の在庫管理も不要になった
- 店内の熱環境が改善:白熱灯60W×30灯(1,800Wの発熱源)が消えたことで、夏場の空調負荷が軽減。店内温度の安定化に貢献した
- 焼肉の見た目が良くなった:Ra85・2700Kで肉の色艶が引き立ち、テーブルに並んだ焼き立ての肉が「映える」ようになった。SNS投稿画像でも肉の色がきれいに撮れるようになったという声がある
- 厨房の作業精度向上:5000K高輝度照明で食材の状態確認が明確になり、焼き加減の判断がしやすくなったとスタッフから報告された
- 油脂付着のメンテ頻度が下がった:アルミフレーム付きCOBテープにより表面清掃が簡単になり、以前ランプ交換時に毎回行っていた内部清掃が不要になった
焼肉店・飲食店に推奨の COB LED テープ
COB8W/m 2700K Ra85(客席・間接照明)
電球色2700K・高演色Ra85。焼き立て肉の色艶と赤みを引き立てる温かみ照明。白熱球から置き換えで同等の雰囲気を省エネで実現。
COB10W/m 5000K Ra85(厨房・調理室)
厨房向け高輝度昼白色。食材の色判断・焼き加減の確認・衛生管理に。Ra85で肉色を正確に識別。
COB6W/m 3000K Ra85(ホール・入口)
中間色3000Kでホール・入口の視認性と温かみを両立。客席照明との滑らかな色温度移行。
PIRセンサーキット(バックヤード・トイレ)
使用頻度が低いエリアに最適。PIR連動で実効稼働率25%以下を実現し年間電力を大幅削減。
焼肉店・飲食店の照明選定チェックリスト
- ✅ 客席は2700〜3000K(電球色):食欲促進・くつろぎ感・滞在時間延長の効果。焼肉の色艶を引き立てる
- ✅ Ra85以上:肉の赤みと霜降りのコントラストが美しく見える演色評価数。Ra80ではやや色ひずみが出る
- ✅ 厨房は5000K昼白色:食材の状態確認・焼き加減判断に。客席と厨房で色温度を使い分ける
- ✅ 油煙環境への配置工夫:ロースター直上への設置を避け、清掃しやすいアルミフレーム付き器具を選択
- ✅ 白熱球からの置き換えを最優先:白熱球は消費電力・発熱・寿命の3点でLEDに大きく劣る。LED化で省エネ66%が実現
- ✅ バックヤード・トイレはPIR:使用頻度が低いエリアへのPIR導入で年間電力をさらに削減
- ✅ 定期清掃計画を立てる:油脂付着は避けられないため、月1回のアルコール拭き取りができるアクセスしやすい設置を設計段階から計画する