「停電になってもサインを消したくない」「災害時に通路の常夜灯を点け続けたい」「防犯のため夜間は最低限のLEDを維持したい」——こうした要望に応えるのがバッテリーバックアップ電源です。LEDテープは消費電力が小さく、少ないバッテリーでも比較的長く点灯できるため、停電対策・BCPの照明として相性が良い負荷です。本記事では、必要なバッテリー容量の計算式と早見表・AC給電とDC給電の違い・切替時間や正弦波の注意点を施工業者向けにまとめます。あわせて、建築基準法の「非常用照明」とは別物である点も最初に押さえておきます。

大前提(法令): 建築基準法の非常用照明・消防法の誘導灯は、点灯時間・照度などの基準を満たした認定器具が法律で義務付けられており、汎用LEDテープ+バッテリーで代替してはいけません。本記事のバックアップは、法定の非常用照明とは別に、サイン・常夜灯・防犯灯・店舗演出などを停電中も点け続けたいという利便・BCP目的のものです。

停電中もLEDを点ける3つの方式

給電のしかたで主に3方式があります。負荷の電圧・必要時間・設置環境で選びます。

方式仕組み向いている用途特徴
AC UPS(無停電電源装置)停電時にバッテリー→インバーターでAC100Vを供給。既存のAC電源+LED電源をそのまま延命既設をいじらず短時間バックアップ導入が簡単/変換ロスあり/時間は短め
DC無停電電源(DC-UPS)24V等のDC系をバッテリーで保持。LEDテープに直流のまま給電新設・24V系を長く点けたい変換ロスが少なく効率的/DC配線の設計が必要
蓄電池+ソーラー太陽光で充電した蓄電池から給電屋外サイン・電源を引けない場所商用電源不要/天候・容量設計が要

効率で選ぶなら: LEDテープは元々DC(12V/24V)で動く負荷です。AC UPSは「DC→AC→またDC」と二重変換になりロスが出ますが、DC無停電電源なら直流のまま給電できるため、同じバッテリーでも持続時間で有利になります。新設で長時間を狙うならDC給電方式が第一候補です。

必要バッテリー容量の計算式

「何WのLEDを何時間点けたいか」が決まれば、必要なバッテリー容量(Wh)は次の式で計算できます。バッテリーは全容量を使い切れない(使える割合=DOD)こと、変換にロスがあることを必ず織り込みます。

必要容量 Wh = W×h÷DOD÷効率

負荷W・点灯時間h・使える割合・変換効率から算出

DOD(使える割合) 鉛50% / Li 80%

鉛電池は深放電に弱く半分目安。リチウムは深く使える

Ah換算 Ah = Wh ÷ V

12V系で147Wh→約12.3Ah。電池の表示Ahと照合

計算例(50WのLEDを2時間)

負荷50W・点灯時間2時間で、リチウム電池(DOD80%)・AC変換効率85%の場合:

  • 必要容量 = 50W × 2h ÷ 0.8 ÷ 0.85 ≒ 147Wh
  • 12V系のAh換算 = 147Wh ÷ 12V ≒ 12.3Ah以上
  • 鉛電池(DOD50%)なら同条件で約235Wh=約2倍の容量が必要

さらに、電池は使ううちに容量が落ちるため、劣化を見込んで計算値の1.2〜1.5倍を選ぶのが実務的です。下表は負荷と必要時間ごとの目安(リチウム・DOD80%・効率85%換算)です。

負荷1時間3時間8時間備考
20W約29Wh約88Wh約235Wh小型サイン・常夜灯
50W約74Wh約221Wh約588Wh中型サイン・通路
100W約147Wh約441Wh約1,176Wh店舗の最低限照明
200W約294Wh約882Wh約2,353Wh大規模・要大型蓄電池

持続時間を伸ばすコツ: 停電中は「全部を通常の明るさで」点ける必要はありません。バックアップ回路だけ調光して明るさを落とす、点灯範囲を絞る、と消費Wが下がり同じバッテリーで何倍も持ちます。停電時用に別回路・別電源を組み、最低限の範囲だけバックアップする設計が現実的です。

選定の注意点(切替時間・波形・寿命)

容量が足りても、次の点を外すと「停電時に一瞬消える」「LED電源と相性が悪い」といったトラブルになります。

  • 切替時間:常時インバーター(オンライン)方式は瞬断ゼロ、ラインインタラクティブ方式は数ミリ秒の切替があります。演出・サインは多少の瞬断でも実害は小さいですが、瞬断を避けたいならオンライン方式かDC給電を選びます。
  • 出力波形(AC UPSの場合):安価な矩形波(疑似正弦波)はLED電源と相性が悪く、異音・効率低下・誤動作の原因になります。正弦波出力を選ぶのが安全です。
  • バッテリーの種類と寿命:鉛は安価だが寿命が短め・重い・深放電に弱い。リチウム(LiFePO4等)は高価だが長寿命・軽量・深く使えます。交換サイクル(2〜5年程度)を見込んで保守計画を立てます。
  • 充電・自己消費:常時待機する機器は平常時にもわずかに電力を消費します。設置場所の温度(バッテリーは高温で劣化が早い)も寿命に影響します。

バックアップ電源 選定チェックリスト

  • 法定の非常用照明・誘導灯が必要な箇所ではないか(必要なら認定器具を別途)
  • バックアップしたい負荷のW数と、必要な点灯時間を決めたか
  • 必要容量Wh=W×時間÷DOD÷効率で計算し、劣化分1.2〜1.5倍を見たか
  • AC給電(UPS)かDC給電(DC-UPS)か、効率と設置で選んだか
  • AC UPSの場合、出力は正弦波か(矩形波はLED電源と相性に注意)
  • 切替時間(瞬断の許容)が用途に合っているか
  • 停電時は調光・範囲限定で消費Wを下げる設計にしたか
  • バッテリーの寿命・交換サイクル・設置温度を保守計画に入れたか

LEDテープは小電力で点くため、バッテリーバックアップと組み合わせれば、停電中もサイン・常夜灯・防犯灯を比較的長く維持できます。鍵は「本当に必要な範囲だけ・必要な明るさで」バックアップすること。負荷を絞れば容量も費用も抑えられ、現実的なBCP照明になります。法定の非常用照明とは役割が違う点だけ、施主にも明確に説明しておきましょう。

よくある質問

停電時に何時間点灯させるには、どのくらいのバッテリー容量が必要ですか?
必要なバッテリー容量(Wh)は「負荷W×点灯時間h÷使える割合(DOD)÷変換効率」で求めます。たとえば50WのLEDを2時間点けたい場合、リチウム電池(DOD80%)でAC変換効率85%とすると、50×2÷0.8÷0.85≒147Whが必要です。12V系なら147Wh÷12V≒12.3Ah以上が目安。鉛電池はDODを50%程度に抑えるため同条件で約2倍要ります。実際は余裕を見て計算値の1.2〜1.5倍を選ぶと、電池の劣化後も時間を確保できます。
パソコン用のUPSにLED電源をつないで停電対策にできますか?
短時間なら可能ですが注意点があります。第一に、安価なUPSの多くは出力波形が矩形波(疑似正弦波)で、LED電源と相性が悪く異音・効率低下・誤動作を起こすことがあります。正弦波出力のUPSが安全です。第二に、パソコン用UPSは数分の電源断をしのいで安全に停止させる用途で、バックアップ時間が短いものが大半です。長時間点灯したいなら容量の大きい機種、または24V系をそのままバッテリーで保持するDC無停電電源(DC-UPS)を検討してください。DC給電は交流への変換ロスがない分、効率と持続時間で有利です。
汎用LEDテープとバッテリーで非常用照明や誘導灯の代わりにできますか?
代わりにはできません。建築基準法の非常用照明や消防法の誘導灯は、点灯時間・照度・耐熱などの基準を満たした認定器具を使うことが法律で義務付けられており、汎用のLEDテープとバッテリーで置き換えることは認められていません。本記事のバックアップは、法定の非常用照明とは別に、停電中もサイン・常夜灯・防犯灯・店舗演出などを点け続けたいというBCP・利便目的のものです。法定の非常用照明・誘導灯が必要な場合は、必ず認定器具を使い、有資格者・専門業者が法令に従って設計・施工してください。

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