店舗改装やホテル改修の現場で多いのが、「壁に付いている既設のつまみ式(スライド式)調光器で、新設したLEDテープも明るさ調整したい」という要望です。この100V側で明るさを絞る方式が位相調光(トライアック調光)です。ところが、白熱灯やハロゲン用に付いていた調光器のままLED電源をつなぐと、ちらつく・うなり音がする・下限で消える・そもそも調光しないといった不具合が高い確率で出ます。原因の多くは「前方位相/後方位相の方式の食い違い」と「最小負荷不足」です。本記事では、施工業者が位相調光でLEDテープを安定して動かすために、方式の違いと対応電源(トライアック調光ドライバー)の選び方を整理します。

先に結論: 位相調光でLEDテープを動かすときは、「位相調光対応と明記されたLED電源(トライアック調光ドライバー)」を使い、その電源が指定する方式(前方位相/後方位相)に調光器を合わせるのが大原則です。外せないのは、(1)前方位相か後方位相かをドライバー指定に合わせる(2)接続W数を調光器の最小負荷以上に保つ(3)調光下限で消えないか通電確認するの3点。既設の白熱灯用調光器の流用は不具合の温床で、原則は調光器も対応品へ更新します。

位相調光(トライアック調光)とは — 100V側で波形を切る方式

位相調光は、交流100Vの波形の一部を切り取って、負荷に届く電力(実効値)を減らし、明るさを絞る方式です。壁埋込のロータリー式・スライド式調光器がこれにあたり、白熱灯時代から普及しているため既設利用のニーズが非常に多いのが特徴です。

ここで重要なのは、LEDテープ本体は12V/24Vの定電圧(CV)で動くため、位相調光は「テープ」ではなく「電源(ドライバー)」に対して行うという点です。位相調光対応のLED電源が、絞られた100V入力を受けて、テープへの直流出力を内部で調整します。位相調光に非対応の一般電源につないでも、正常な調光にはなりません。調光方式全体の位置づけはLEDテープの調光方式(PWM・CCR・位相・DALI)ガイドも参考にしてください。

前方位相(リーディングエッジ)と後方位相(トレイリングエッジ)の違い

位相調光には、波形の「頭」を切るか「後ろ」を切るかで2つの方式があります。方式が食い違うと調光しない・ちらつくため、まずここを確認します。

区分前方位相(リーディングエッジ)後方位相(トレイリングエッジ)
切る場所交流波形の立ち上がり(頭)を遅らせて切る交流波形の後ろ側を切る
主なスイッチ素子トライアック式が多いMOSFET式(電子式)が多い
相性の良い負荷白熱灯・一部のLED電源(誘導性負荷にも可)電子トランス・コンデンサ入力のLED電源
調光の質・音安価で普及。うなり音が出やすい場合ありなめらかで静音の傾向。LEDとの相性が良いことが多い
最小負荷比較的大きいことが多い(例:数十W)小さめのこともあるが機種次第

選び方の原則: 前方/後方位相は「使うLED電源のデータシートが指定する方式」に合わせます。ドライバーが後方位相専用なら後方位相の調光器を、前方位相専用なら前方位相の調光器を使います。両方式に対応するユニバーサル調光器(前後切替式)なら、方式が読み切れない改修現場で外しにくくなります。

既設の白熱灯用調光器を流用してよいか

「壁の調光器はそのまま、電球だけLEDに替えたい」——現場で最も多い要望ですが、白熱灯用調光器のLED流用は不具合の温床です。理由は次の通りです。

  • 最小負荷不足: 白熱灯用調光器は「○○W以上」という最小負荷を前提にしています。LEDは消費電力が小さいため、テープ数本ではこの最小負荷を下回り、点滅・立ち消えを起こします。
  • 方式の食い違い: 既設が前方位相(トライアック)でも、つなぐLED電源が後方位相専用だと正常に調光できません。
  • 保持電流の不足: トライアックは一定以上の電流が流れ続けないと導通を保てず、LEDの少ない電流ではちらつきの原因になります。

どうしても既設調光器を活かす場合は、その調光器の方式(前方/後方位相)と最小負荷を確認し、同方式で調光できると明記されたドライバーを選び、最小負荷を満たすW数・台数で構成します。ただし安定を優先するなら、調光器もLED対応品(前後切替式や後方位相式)へ更新するのが確実です。

最小負荷と接続台数の考え方(計算の目安)

位相調光で「絞ると消える」「暗い側でちらつく」を防ぐ鍵が最小負荷です。調光器のカタログに記載された最小負荷(例:15W)を、接続するLED電源の合計W数が上回るように構成します。

項目考え方・目安
調光器の最小負荷例:15W(カタログ記載値)。合計W数がこれを下回ると立ち消え・ちらつき。
調光器の最大負荷例:白熱灯換算○○W。LED負荷では換算率を下げて余裕を取る(例:定格の1/2以内で見る)。
接続W数の見積りテープW/m × 総m数 + 電源のロス(効率85〜90%なら約1.1〜1.2倍)。
最小負荷を満たせない時負荷補償ユニット(ダミーロード)を追加、または位相調光をやめて0-10V/PWM/DALIへ方式変更。
台数(並列)複数ドライバーを1台の調光器に並列接続する場合、合計W数を最大負荷の余裕内に収める。

ワンポイント: LED負荷は突入電流(インラッシュ)が大きく、白熱灯換算の最大負荷いっぱいまで台数をぶら下げると、調光器の破損やブレーカートリップにつながります。最大負荷は白熱灯換算値の半分程度を上限に見積もると安全です。突入電流の詳細は突入電流とブレーカートリップ対策ガイドを参照してください。

調光の対象 電源側 テープではなく位相調光対応ドライバーに100Vを入れる。
方式 前方 / 後方 ドライバー指定に調光器を合わせる。不明なら切替式。
最小負荷 要確保 合計W数が調光器の最小負荷を下回ると立ち消え。
最大負荷の見方 余裕1/2 LED負荷では白熱灯換算値をそのまま使わず余裕を取る。

位相調光か、0-10V/PWM/DALIか — 方式選定の判断

「既設の壁調光器を残したい」なら位相調光ですが、新設で自由に選べるなら他方式のほうが安定・拡張しやすい場合があります。現場条件で選びます。

項目位相調光(トライアック)0-10V/1-10VPWM(直接)DALI
既設壁調光器の流用可(方式・最小負荷が合えば)不可(信号線が別途必要)不可不可
安定性相性・最小負荷に左右される安定テープ近接なら安定非常に安定
下限(深絞り)下限で消えやすい約1〜10%0%まで可0%まで可
配線100V線のみ(信号線不要)2線・極性あり電源出力をPWM2線・極性レス
向く現場改修で壁調光器を残す小〜中規模店舗・施設の一斉調光テープと電源が近い小規模多シーン・多回路

信号線を引ける新設なら0-10V/1-10V調光、多回路・多シーンならDALI調光が安定します。壁調光器を残す改修に限って位相調光が有利、と整理すると迷いません。

よくあるトラブルと対処

症状主な原因対処
調光すると細かくちらつく方式の食い違い・トライアック保持電流不足ドライバー指定の方式(前方/後方)に調光器を合わせる、負荷補償ユニット追加
「ジー」といううなり音前方位相とコンデンサ入力電源の相性後方位相の調光器・後方位相対応ドライバーに変更
絞りきる前に消える(立ち消え)合計W数が調光器の最小負荷を下回るW数・台数を増やす、負荷補償ユニット追加、調光下限を上げる
まったく調光しない・全光のまま位相調光非対応の電源を使用「位相調光対応」と明記されたドライバーに交換
調光器やブレーカーが落ちる台数過多・突入電流過大最大負荷を白熱灯換算の半分以内に、系統を分割(突入電流ガイド

位相調光でLEDテープを選ぶチェックリスト

  • 使うLED電源が「位相調光(トライアック調光)対応」と明記されている
  • 電源が指定する方式(前方位相/後方位相)に調光器を合わせた
  • 既設調光器を流用するなら、方式と最小負荷を確認した
  • 接続するLED電源の合計W数が調光器の最小負荷を上回っている
  • 最大負荷はLED負荷向けに余裕(白熱灯換算の半分程度)を取った
  • 最小負荷を満たせないときの負荷補償ユニットの要否を検討した
  • 全閉〜全開で下限まで消えずに滑らかに変化するか通電確認した

よくある質問

既設の白熱灯用調光器をそのまま使ってLEDテープを調光できますか?
そのままでは正常に調光できないことが多く、原則は「位相調光対応のLED電源(トライアック調光ドライバー)」に交換前提で考えます。既設の壁埋込調光器の多くは白熱灯用の前方位相(リーディングエッジ/トライアック式)で、これはLED負荷では最小負荷不足やインダクタ・コンデンサとの相性でちらつき・うなり・立ち消え・調光下限で消えるといった不具合が出やすいです。どうしても既設調光器を活かす場合は、その調光器が前方位相か後方位相かを確認し、同じ方式で調光できると明記された位相調光対応ドライバーを選び、最小負荷(例:15W以上など)を満たす台数・W数で構成します。調光器そのものをLED対応(前後方位相切替式など)に更新できるなら、そのほうが安定します。
前方位相(リーディングエッジ)と後方位相(トレイリングエッジ)はどう使い分けますか?
電源の入力回路の種類で選びます。前方位相は交流波形の頭を切る方式でトライアック式に多く、白熱灯・一部のLED電源に対応します。後方位相は波形の後ろを切る方式でMOSFET式に多く、電子トランスやコンデンサ入力のLED電源と相性が良く、うなり音が小さく調光がなめらかな傾向があります。原則は「使うLED電源(ドライバー)のデータシートが指定する方式」に合わせることです。ドライバーが後方位相専用なら後方位相の調光器を、前方位相専用なら前方位相の調光器を使います。方式が不明・混在する現場では、前後方位相を切り替えられるユニバーサル調光器を使うと外しにくくなります。
位相調光でちらつく・うなる・調光下限で消えるのはなぜですか?
多くは「調光器とLED電源の相性」か「最小負荷不足」が原因です。位相調光器はもともと白熱灯のような抵抗負荷を想定しており、LED電源(スイッチング電源)は入力電流の波形が異なるため、トライアックの保持電流を満たせず点滅(ちらつき)したり、コイル鳴き(うなり)を起こしたりします。対処は、(1)調光器の方式(前方/後方位相)をドライバー指定に合わせる、(2)接続W数が調光器の最小負荷を下回らないよう台数・W数を確保する、(3)最小負荷が足りないときは負荷補償ユニット(ダミーロード)を追加する、(4)調光下限で消えるなら調光下限(最小調光率)を調整できるドライバーや、位相調光より安定する0-10V/PWM/DALIへ方式変更を検討する、の順で切り分けます。

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