「夏の雷雨の翌朝、屋外サインが点灯しなくなった」「テープは無事なのに LED 電源だけ壊れた」——屋外 LED 施工でシーズンごとに発生するこのトラブル、原因のほとんどは 雷サージ(落雷に伴う瞬間的な過電圧)です。しかも厄介なことに、近くに落ちていなくても 誘導雷で壊れます。本記事では、雷サージがどこから侵入して何を壊すのか、誘導雷と直撃雷の違い、そして SPD(サージ保護デバイス/避雷器)の選び方と接地の基本を、屋外サイン・外構・屋上設備を扱う施工業者の現場目線で解説します。

なぜ落雷でLEDが壊れるのか — 雷サージの正体

雷サージとは、落雷によって電源線・信号線・接地系に瞬間的に発生する 過大な電圧(過電圧)のことです。通常 AC100V の回路に、一瞬だけ数百〜数千 V もの電圧が乗ることがあり、これが電子部品の耐圧を超えて回路を焼き切ります。LED 照明で最初に犠牲になりやすいのは、次の順です。

  • LED電源(PSU)の入力回路:AC 側から侵入するため最も壊れやすい。
  • コントローラ・調光器・受信機:信号線経由でも侵入する。
  • LEDテープ本体:PSU を通り抜けた過電圧が届くと素子が破損。

切り分けの第一歩: 落雷後に点かなくなったら、まず PSU の出力電圧をテスターで測定。出ていなければ PSU 故障(多くはこれ)。出ているのに点かなければテープ/コントローラ側を確認します。テスターでの診断はテスターによる通電チェックガイドを参照。

直撃雷と誘導雷の違い — 多いのは「誘導雷」

雷の被害は「直撃」だけではありません。実際の故障は、近隣への落雷で配線に過電圧が誘導される 誘導雷が大半を占めます。

種類起き方頻度・特徴主な侵入経路
直撃雷設備・建物に直接落雷稀だがエネルギー甚大。受雷部・引下げ線で対処構造体・接地系
誘導雷近隣落雷で配線に過電圧が誘導頻度が高い。電子機器故障の主因AC電源線・信号線
逆流(地電位上昇)接地電位が一時的に跳ね上がる接地経由で機器に侵入接地線・FG

誤解しやすい点: 「うちには落ちていないから大丈夫」は通用しません。誘導雷は数百m〜数km離れた落雷でも発生します。屋外サイン・屋上・外壁・自立看板など、配線が長く外気にさらされる施工ほどリスクが高いと考えてください。

対策の主役 — SPD(サージ保護デバイス/避雷器)

誘導雷対策の中心になるのが SPD(Surge Protective Device=サージ保護デバイス、避雷器)です。SPD は通常時は何もせず、過電圧が来た瞬間だけサージ電流を接地(アース)へ逃がし、機器に届く電圧を抑える部品です。電源側(分電盤)と機器直近に入れることで、LED 電源を守ります。

クラス役割主な設置位置
クラスI直撃雷の大電流を分流引込口・主分電盤(直撃リスク箇所)
クラスII誘導雷の過電圧を抑制分電盤・分岐回路
クラスIII機器直近で残留サージを抑制器具・PSUの直前

屋外サインや屋上設備のように誘導雷を受けやすい一般的な回路では、分電盤のクラスII+機器直近のクラスIIIを基本に、直撃リスクのある箇所はクラスI を組み合わせる「段階的保護(カスケード)」が定石です。

SPD選定でチェックする項目

確認項目意味・見るポイント
電源系統との適合単相100V/200V・三相など、回路方式に合った型を選ぶ
最大連続使用電圧(Uc)回路の常用電圧より十分高いこと(誤動作防止)
最大放電電流(Imax)/公称放電電流(In)逃がせるサージ電流の大きさ。設置位置に応じて選ぶ
電圧保護レベル(Up)SPD通過後に機器へ残る電圧。低いほど機器を守れる
劣化表示・分離器寿命到達を表示する窓・内蔵分離器の有無

注意: SPD の具体的な機種・定格は回路条件と設置環境で変わります。AC 側の SPD 設置・接地工事は電気工事士による施工が必要です。本記事は選定の考え方の整理であり、実機選定はメーカー資料と有資格者の判断で行ってください。料金や品番を憶測で決めないこと。

SPDは「接地」とセットで初めて効く

SPD はサージを接地(アース)へ逃がす部品なので、接地が不十分だと本来の性能を発揮できません。施工で外せないポイントは次のとおりです。

  • 低インピーダンスの確実な接地:接地線は太く・短く。逃がし先がなければ SPD は機能しない。
  • 接地線はできるだけ短く直線的に:曲げ・余長はインピーダンスを上げ効果を削ぐ。
  • 等電位ボンディング:金属筐体・フレーム・接地を電位的につなぎ、電位差での破壊を防ぐ。
  • 金属筐体サインのアース:自立看板・チャンネル文字の金属部は確実に接地する。

屋外金属部の絶縁・アースの基本は金属面への絶縁施工ガイド、屋外配線の防水は防水処理の施工ガイドもあわせてご確認ください。

設計・施工で減らす — SPD以外の予防策

SPD に加え、配線・設置の工夫でサージの侵入確率と被害を下げられます。

対策狙い
電源線・信号線を長く引き回さない誘導される過電圧(ループ面積)を減らす
電源線と信号線を離す/必要に応じシールド線間での誘導・回り込みを抑える
屋外区画ごとにPSU・SPDを分散1か所被災時の影響範囲を限定(分散配置)
金属筐体・支柱を確実に接地地電位上昇による機器破壊を防ぐ
交換しやすい設置・予備PSU常備被災時の復旧時間を短縮

電源を区画ごとに分ける考え方は電源の集中配置と分散配置ガイドで詳しく解説しています。屋外用テープ自体の選定は屋外サイン用LEDテープ選定ガイドを参照してください。

被災後の点検・復旧手順

  1. ブレーカー・SPDの状態確認:SPD の劣化表示が出ていれば交換。トリップ有無を確認。
  2. PSU出力電圧を測定:規定 DC が出ているか。出ていなければ PSU 交換。
  3. テープ・コントローラの点検:PSU 正常でも点かなければ下流を確認。部分損傷なら該当区間を交換。
  4. 接地・端子の緩み確認:サージ後は端子ゆるみ・焼損の有無もチェック。
  5. 再発防止:SPD 未設置なら今回を機に AC 側へ追加。被災区画は分散化を検討。

現場の備え: 雷の多い地域・屋外サイン案件では、同型 PSU を予備在庫しておくと、被災シーズンの復旧が一気に速くなります。点検口・PSU 設置位置を交換しやすく作っておくのも、引き渡し後の保守を楽にするコツです。

まとめ

ポイント内容
壊れる原因雷サージ(過電圧)。最初に壊れるのは多くがLED電源(PSU)
多いのは直撃でなく「誘導雷」。離れた落雷でも配線経由で侵入
主役の対策SPD(避雷器)を分電盤+機器直近に段階設置
必須条件SPDは確実な接地(低インピーダンス)とセットで効く
復旧の順SPD/ブレーカー → PSU出力 → テープ/コントローラの順で切り分け

屋外 LED の落雷被害は「テープが弱い」のではなく、ほとんどが AC 側から侵入する雷サージの問題です。誘導雷を前提に SPD と接地を設計へ織り込めば、被災確率と復旧時間を大きく下げられます。なお AC 側の保護機器の施工は電気工事士の領域です。本記事の考え方を土台に、実機の定格は有資格者とメーカー資料で確定してください。

よくある質問

屋外のLEDサインが落雷後に点灯しなくなりました。テープ自体が原因ですか?
多くの場合、最初に壊れるのはLEDテープ本体ではなくAC側のLED電源(PSU)です。雷サージ(瞬間的な過電圧)はAC電源線から侵入してPSUの入力回路を破壊するため、テープは無事でも電源だけ死ぬケースが典型です。落雷後はまずPSUの出力電圧を測定し、出ていなければPSU交換、出ているのにテープが点かなければテープ側の損傷を確認します。
近くに落ちていないのにLEDが壊れたのはなぜですか?
直撃でなくても『誘導雷』で壊れます。近隣への落雷で電源線や信号線に誘導された過電圧(サージ)が、配線を伝ってLED電源やコントローラに侵入するためです。屋外サインや屋上・外壁の配線は誘導雷を受けやすく、直撃よりむしろ誘導雷による故障のほうが頻度は高いと考えてください。だからこそAC側のSPD設置が重要になります。
屋外LEDの雷対策にはどんなSPD(避雷器)を選べばよいですか?
屋外サイン・屋上設備のように誘導雷を受けやすい回路では、分電盤や器具直近のAC側にクラスII(または直撃リスクのある箇所はクラスI)のSPDを設置します。選定では電源の系統(単相100V/200V等)に合った定格電圧、最大放電電流、製品の保護レベル(Up)を確認します。SPDは必ず低インピーダンスで確実に接地(アース)して初めて機能するため、接地の施工とセットで考えてください。具体的な機種・定格は電気工事士・メーカー資料で確認します。

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