間接照明が長く回る店舗、大面積の光天井、複数フロアにまたがるサインなど、1台の電源では容量が足りない現場では電源(PSU)を複数台に分けて使うことになります。ここで「出力を並列につないで容量を増やせばいい」と考えると、電流の片寄りや保護停止の玉突きで事故につながります。正しいのは、テープを区間で分けて1区間=1電源の「負荷分担」で設計することです。本記事では、複数台の電源をどこで切り、二次側(12V/24V)と一次側(100V幹線)をどう配線するかを、計算例つきで施工業者向けに整理します。
先に結論: 複数電源の基本は「二次側出力は並列にせず、テープを区間ごとに独立させて1区間=1電源」。外せないのは、(1)各電源は定格の70〜80%を上限に負荷を割り当てる、(2)区間長は電圧降下でも切る(負荷と電圧降下の短いほうが担当区間)、(3)一次側は合計電流と突入電流で分岐回路・ブレーカー・電線を選ぶの3点。出力の並列は「並列運転対応」電源に限ります。
なぜ電源を分けるのか — 容量・電圧降下・冗長性
電源を複数台に分ける理由は主に3つです。
- 容量(W)が足りない: テープの合計消費電力が1台の定格を超える。これが最も多い理由です。
- 電圧降下を抑えたい: 長尺を1台の端から給電すると末端が暗くなる。電源を分散配置すれば給電点が増え、末端までの距離が短くなります(電圧降下ガイド参照)。
- 系統を分けたい: フロア・シーンごとに独立させたい、1台故障時に全消灯を避けたい。
いずれの理由でも、設計の出発点は「合計負荷を出して、1台あたりの担当を決める」ことです。電源1台の容量選定そのものは電源容量の選び方ガイドを先に押さえてください。
出力(二次側)の並列はNG — 負荷分担が基本
「12V/24Vの出力を+同士・−同士でつなげば容量2倍」——これは並列運転対応と明記された電源以外ではやってはいけません。理由は電圧の個体差です。
| やり方 | 挙動 | 可否 |
|---|---|---|
| 非対応電源の出力を単純並列 | 電圧が高い1台に電流が集中→過負荷・過熱・保護停止→玉突きで全体ダウン | NG |
| 負荷分担(1区間=1電源で独立) | 各電源が自分の区間だけ給電。片寄りなし・故障が局所で済む | 推奨 |
| 並列運転対応電源+均等化配線 | カレントシェアリングで電流を均等分担。冗長化も可 | 可(メーカー指定に従う) |
要注意: 負荷分担で分けた区間は、二次側を互いに接続しない(+も−も渡さない)のが原則です。特に−(GND)を区間間で共通にすると、電源間で電位差により回り込み電流が流れ、片方の保護が働く・発熱するといった不具合になります。RGBやアドレサブルで信号のGND基準を揃える必要がある場合のみ、メーカー指定に従って信号GNDを慎重に扱います。
区間の切り方 — 負荷と電圧降下の短いほうで切る
1台が担当できる長さは、「負荷(W)で決まる長さ」と「電圧降下で決まる長さ」の短いほうです。両方を計算して、短いほうをその電源の区間にします。
① 負荷(W)で決まる長さ
電源は定格の70〜80%を上限に使います(連続使用・発熱・寿命の余裕)。
- 使える出力 = 電源定格 × 0.8
- 担当できるm数 = 使える出力 ÷ テープのW/m
例: 200W電源、14.4W/mのテープ → 200 × 0.8 = 160W → 160 ÷ 14.4 ≒ 約11m。
② 電圧降下で決まる長さ
テープは末端まで電流が流れるほど電圧が下がり、末端が暗くなります。片端給電での許容長を超えるなら、電源を区間の中央に置いて左右に給電する「中央給電」にすると、実効的な給電距離が半分になり倍の長さを扱えます。
| 給電方法 | 実効給電距離 | 効果 |
|---|---|---|
| 片端給電 | 区間長そのまま | 基本。末端が最も暗い |
| 中央給電(左右へ分岐) | 区間長の1/2 | 同じ電圧降下で約2倍の長さを扱える |
| 両端給電(両端から給電) | 区間長の1/2 | 末端の暗さを緩和。24V化・太線化と併用 |
電圧降下の許容値やケーブル太さの計算は電圧降下ガイド・電線太さ(sq)選定ガイドで確認してください。24Vテープは同じ長さでも電圧降下の影響が小さく、長尺で有利です(12V/24V比較)。
一次側(100V幹線)の設計 — 分岐・ブレーカー・電線
電源が複数になると、100V側の幹線・分岐・ブレーカー容量も設計対象になります。ここは電気工事士の領域です。
一次側電流の概算
各電源の一次側電流を出し、合計が分岐回路の許容内かを見ます。
- 一次側電流(A)≒ 電源の入力W ÷ 100V(力率が明記されていればさらに ÷ 力率)
- 入力W ≒ 出力W ÷ 効率(効率88%なら出力160W → 入力約182W → 約1.8A/台)
- 分岐回路の連続負荷は定格の80%以内(20Aなら16Aまで)
例: 1.8A/台の電源を20A分岐回路にまとめる場合、16A ÷ 1.8A ≒ 約8台まで(突入電流の余裕を別途見る)。
| 項目 | 考え方・目安 |
|---|---|
| 定常電流の合計 | 各電源の一次側電流の合計。分岐回路定格の80%以内に。 |
| 突入電流(インラッシュ) | 投入時に定格の数倍〜数十倍。同時投入台数が多いとトリップ(突入電流ガイド)。 |
| ブレーカー | 同時投入が多い系統は時限特性(遅延)タイプや突入抑制ユニットを検討。 |
| 電線サイズ | 幹線・分岐とも合計電流に対して許容電流・電圧降下で選定(sq選定)。 |
| 系統分割 | 大規模は系統ごとに分岐回路・ブレーカーを分け、同時投入を分散。 |
ワンポイント: 同時に多数の電源へ通電すると突入電流が重なり、定常電流には余裕があってもブレーカーが瞬時にトリップします。台数が多い現場は系統をずらして投入する(タイマー分散)か、突入電流抑制ユニットを入れると再現性のあるトラブルを防げます。
点灯タイミングと一括ON/OFF
区間を独立させると、電源ごとに点灯・消灯のタイミングが微妙にずれることがあります。見た目を揃えたい・一括で操作したい場合は次のようにします。
- 一次側スイッチを共通化: 複数電源の100V側を1つのスイッチ/リレー/電磁接触器でまとめてON/OFF(大電流はマグネットコンタクタ、詳細は一括開閉ガイド)。
- 調光も一次側または信号で共通化: 位相調光なら一次側、0-10V/DALIなら信号線を各電源へ渡して一斉制御。
- 起動遅延の揃え: 電源に起動遅延(ソフトスタート)があると点灯タイミングがずれることがある。気になる場合は同一機種で揃える(起動遅延ガイド)。
複数台電源の設計チェックリスト
- 合計消費電力を算出し、各電源は定格の70〜80%以内で割り当てた
- 二次側出力は区間ごとに独立させ、並列(+・−とも)にしていない
- 区間長は「負荷で切る長さ」と「電圧降下で切る長さ」の短いほうにした
- 長尺は中央給電・両端給電・24V化で電圧降下を抑えた
- 一次側の合計電流が分岐回路定格の80%以内に収まっている
- 同時投入の突入電流対策(系統分散・時限ブレーカー・抑制ユニット)を検討した
- 一括ON/OFF・調光の共通化と点灯タイミングを確認した
- 一次側配線は電気工事士が施工する前提で計画した
よくある質問
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