造作家具・店舗什器へのLEDテープ埋め込みは、壁面や天井の間接照明と違って「あとから直せない」施工です。家具工場で溝加工が終わってから「フレームが入らない」「配線を通す穴がない」「電源の置き場所がない」と気付いても、現場ではほぼリカバリーできません。逆に言えば、図面段階で溝寸法・放熱・配線逃げ・電源の点検動線の4点を押さえておけば、埋め込み照明は最もトラブルの少ない施工のひとつになります。本記事では、家具工事と電気工事の取り合いで必要になる数値基準を施工業者向けに整理します。

埋め込み施工で失敗が起きる4つのポイント

家具・什器埋め込みのトラブルは、ほぼ次の4つに集約されます。

  • 溝寸法の不足:アルミフレームの外形とクリアランスを見込まず、現場でフレームが入らない・カバーが浮く
  • 放熱不足:木部直貼り・密閉溝で高出力テープを使い、数ヶ月で暗くなる・糊が劣化して剥がれる
  • 配線逃げの未確保:棚板・仕切り板に配線穴がなく、露出配線か追加加工になる
  • 電源の埋め殺し:PSU(電源装置)を点検できない場所に固定し、故障時に家具の解体が必要になる

以下、この順に設計基準を見ていきます。

溝寸法の設計基準(フレーム外形+クリアランス)

埋め込み溝の寸法は「テープの幅」ではなく「アルミフレームの外形寸法」を基準に決めます。テープ幅ぴったりの溝を掘ってしまうのが最も多い失敗で、テープ幅8mmでもフレームを使うなら溝幅は17〜18mm程度必要です。

フレームタイプ(例)外形寸法の目安推奨溝寸法(幅×深さ)納まり
スリム型(幅17mm×高さ8mm)W17×H8mmW18×D8〜9mmカバー面が家具面とほぼ面一
標準型(幅17mm×高さ15mm)W17×H15mmW18×D15〜16mm深型でドット感を抑えやすい
コーナー型(45度照射)W16×H16mm(三角断面)入隅にビス留め(溝不要)棚内の入隅・ガラス棚下向け
フレームなし直貼りテープ幅8〜12mmW10〜14×D3〜5mm低出力テープ限定(後述)

クリアランスの考え方は次のとおりです。

  • 幅方向:フレーム外形+合計1mm前後(片側0.5mm)。木材は湿度で伸縮するため、圧入前提のゼロクリアランスは避ける
  • 深さ方向:フレーム高さちょうど〜+1mm。面一に見せる場合は「拡散カバーを付けた状態の総高さ」で採寸する
  • 長さ方向:フレーム全長+2〜3mm。エンドキャップ(両端各1〜2mm)のぶんを忘れない

注意:溝寸法は使用するフレームの型番が確定してから最終決定してください。同じ「幅17mm」表記でもメーカー・シリーズにより外形は0.5〜1mm単位で異なります。家具図面の承認前に、フレーム実物または寸法図(断面図)を家具工場へ渡すのが確実です。

放熱設計:W/mで直貼り可否を判断する

木材・MDF・メラミン化粧板は熱をほとんど逃がしません。LEDテープは基板の熱をどこに逃がすかで寿命が決まるため、消費電力(W/m)でアルミフレームの要否を判断します。

テープ消費電力木部直貼りアルミフレーム判断の目安
〜5W/m(低出力SMD)○ 可推奨飾り棚のアクセントなど短時間点灯なら直貼り可
5〜10W/m(標準SMD)△ 条件付き強く推奨長時間点灯(営業時間中の常時点灯)はフレーム必須と考える
10W/m以上(高出力SMD・COB)× 不可必須直貼りは温度上昇で光束低下・糊劣化が早期に出る
直貼り上限の目安 5W/m 木部・化粧板への直貼りはこれ以下の低出力テープに限定
フレーム必須ライン 10W/m COB・高密度SMDはアルミの放熱面が前提の設計
溝幅クリアランス +1mm フレーム外形に対し片側0.5mmずつ
配線穴の標準径 Φ10mm DCコネクタごと通す場合はΦ12mm以上

密閉度も影響します。ガラス扉付きショーケースのように空気がこもる場所では、同じW/mでも温度は上がりやすくなります。放熱の考え方の詳細はLEDテープの発熱と放熱対策を参照してください。

配線逃げ・貫通穴の設計

埋め込み施工では、テープから電源までの配線経路を家具の加工図面に載せる必要があります。現場で追加の穴あけをすると化粧面を傷めるリスクが高いため、以下を図面段階で確定させます。

貫通穴の径と位置

  • 電線のみ通す場合:Φ8〜10mm(0.3〜0.75mm²の2芯を1〜2本通す想定)
  • DCコネクタ・防水コネクタごと通す場合:Φ12mm以上(コネクタ外径+余裕。使用コネクタの実寸を必ず確認)
  • 位置:溝の端部直下・見え掛かりにならない棚板の奥側。穴は配線後にコードブッシュ(グロメット)で化粧する

電圧降下と給電位置

什器内で複数段の棚を光らせる場合、1本の長い直列にせず段ごとに並列で給電します。DC24Vでも片側給電で5mを超えると先端の光量低下が目視できるレベルになることがあります。棚ごとの分岐にはWAGOなどの端子台を背板裏に設け、分岐点も点検口から触れる位置に置きます。計算方法は電圧降下の計算と対策にまとめています。

電源(PSU)の置き場所

設置場所可否条件・注意点
台輪内(家具下部の空間)底板または前板を外せる構造にする。ホコリ堆積を想定し年1回の清掃動線を確保
背板裏の機器スペース点検口(マグネットキャッチの化粧蓋など)必須。通気孔を上下に設ける
引き出し最下段の奥引き出しを抜けば手が届くこと。可動部と配線が干渉しない固定を行う
完全密閉の箱内×周囲温度上昇で電源寿命が大幅に低下。通気孔なしでの密閉は不可
家具外(天井裏・床下・什器裏の壁面)放熱・点検とも最良。家具までの配線経路の見え掛かりだけ処理する

原則:電源はテープより先に故障する消耗品です。「工具なし(またはドライバー1本)で交換できる位置」に置けない設計は、埋め込み施工では採用しないでください。電源容量の選定は電源容量計算の手順を参照してください。

家具材質別の注意点

材質両面テープの効き注意点
メラミン化粧板◎ 良好表面の離型剤・ワックスをアルコールで脱脂してから貼る
ポリ合板・突板(ウレタン塗装)○ 良好塗装完全乾燥後に施工。塗りたては糊と塗膜が反応することがある
無垢材・オイル仕上げ△ 弱いオイル分で糊が効かない。フレームをビス固定し、テープはフレーム内に貼る
MDF素地△ 弱い粉じんで糊が効きにくい。プライマー処理かフレームのビス固定を使う
ガラス・ミラー面◎ 良好脱脂必須。光源の映り込み位置を現物で確認してから貼り位置を決める

下地処理の詳細はLEDテープの下地処理・プライマー活用、剥がれ対策は施工後に剥がれる原因と対策を参照してください。

埋め込み施工の標準手順

  1. 図面承認前:フレーム型番を確定し、断面図(外形寸法)を家具図面に反映。溝寸法・配線穴・電源スペース・点検口を明記する
  2. 工場加工:溝加工・配線穴あけは家具工場で実施(現場加工は化粧面破損のリスクが高い)
  3. 搬入後・据付前:溝にフレームを仮合わせし、入り・深さ・長さを確認。この時点なら工場修正が間に合う
  4. 配線先行:据付前に配線を貫通穴へ通線し、グロメットを装着。据付後に通せない経路がないか確認する
  5. フレーム固定:両面テープまたは皿ビスで溝内に固定。ビスの場合は頭がテープ貼付面から出ないこと
  6. テープ貼付・結線:脱脂→貼付→端子処理。極性(+−)をテスターで確認してから電源に接続する
  7. 点灯確認:カバー装着前に全点灯・調光動作を確認。ドット感・映り込みを現物でチェックしカバーを装着する
  8. 引き渡し準備:電源の位置・点検口の開け方・使用テープの型番と残長を竣工書類に記録する

よくある失敗と対処

症状主な原因対処法
フレームが溝に入らないクリアランス不足・塗装の膜厚溝側を再加工(トリマー)。フレームの切削は精度が出ないため避ける
カバーが家具面から出っ張る深さをフレーム単体高さで採寸したカバー込みの総高さで深さを再加工。不可なら出っ張り前提の面取り納めに変更
数ヶ月で暗くなった・変色した高出力テープの木部直貼り・密閉による過熱アルミフレームに変更し放熱面を確保。過熱の診断を参照
テープが垂れてきた・剥がれた下地の脱脂不足・オイル仕上げ材への直貼り脱脂・プライマー処理の上で再貼付、またはフレームのビス固定に変更
棚の奥だけ暗い直列送り配線による電圧降下段ごとの並列給電に変更。分岐は背板裏の端子台で行う
電源故障時に交換できない点検口なしで埋め殺した最寄りの化粧板を点検口化する改修が必要。以後の物件では図面段階で点検口を確保

家具埋め込み 設計・施工チェックリスト

  • フレーム型番を確定し、外形寸法(断面図)を家具図面に渡した
  • 溝寸法はフレーム外形+幅1mm・深さ0〜1mmのクリアランスで指定した
  • 面一納めの場合、拡散カバー込みの総高さで深さを決めた
  • テープのW/mを確認し、10W/m以上はアルミフレーム必須とした
  • 配線穴(Φ10mm以上・コネクタ通しはΦ12mm以上)を図面に明記した
  • 複数段の棚は段ごと並列給電にし、片側給電5m超の直列を避けた
  • 電源は点検口から工具なしで交換できる位置に設置した
  • 電源スペースに通気を確保した(完全密閉にしていない)
  • 貼付前に下地を脱脂し、オイル仕上げ・MDF素地はビス固定を選んだ
  • カバー装着前に全点灯・調光・極性を確認した
  • 使用テープの型番・残長・電源位置を竣工書類に記録した

まとめ

設計項目基準
溝寸法フレーム外形+幅1mm・深さ0〜1mm。面一はカバー込み総高さで採寸
放熱直貼りは5W/m以下限定。10W/m以上はアルミフレーム必須
配線逃げ貫通穴Φ10mm以上を図面段階で確定。グロメットで化粧
給電棚は段ごと並列。片側給電5m超の直列送りは避ける
電源点検口から交換可能な位置+通気確保。埋め殺し禁止

家具埋め込みは「電気屋の仕事」と「家具屋の仕事」の取り合いで抜けが生まれます。フレーム断面図・配線穴・点検口の3点を家具図面の承認前に反映させることが、現場での手戻りをなくす最短ルートです。

よくある質問

木の溝にLEDテープを直接貼ってもいいですか?アルミフレームは必須ですか?
消費電力がおおむね5W/m以下の低出力テープであれば木部への直貼りでも動作はしますが、木材は熱を逃がさないためテープ温度が上がりやすく、寿命の低下・両面テープの糊の劣化・剥がれにつながります。10W/m前後以上の高出力テープ・COBテープを埋め込む場合はアルミフレーム(アルミチャンネル)を溝に納めて放熱面を確保してください。アルミフレームには「テープの直線が出る」「拡散カバーでドット感と埃を防げる」「テープ交換時にフレームごと外せる」という施工上のメリットもあるため、造作埋め込みでは出力にかかわらずフレーム使用を推奨します。
埋め込み溝の幅と深さはどのくらい確保すればいいですか?
使用するアルミフレームの外形寸法に対して、幅は片側0.5mm(合計1mm)程度、深さはフレーム高さちょうど〜+1mm程度のクリアランスを見込むのが目安です。例えば外形幅17mm×高さ8mmのスリムフレームなら、溝幅18mm×深さ8〜9mmが基準になります。きつすぎるとフレームが入らず現場加工が発生し、緩すぎると固定が両面テープ頼みになりガタつきます。木材は湿度で伸縮するため、圧入前提のゼロクリアランス設計は避けてください。カバー面を面一(つらいち)に見せたい場合は、拡散カバー込みの総高さで深さを決めます。
電源(PSU)は家具のどこに隠せばいいですか?
「点検・交換のために工具なしで手が届くこと」と「放熱スペースがあること」の2条件で決めます。推奨は台輪(下部の巾木状の空間)・背板裏の点検口付きスペース・引き出し奥の機器スペースなど、扉や点検口から手が届く場所です。完全に密閉された箱内は電源の周囲温度が上がり寿命を縮めるため、通気孔を設けるか、家具外(天井裏・什器下の床面など)への設置に切り替えてください。電源は消耗品であり、テープより先に故障するのが一般的です。埋め殺しにすると故障時に家具の解体が必要になるため、必ず交換動線を残してください。

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