図面に「バランス照明」とだけ書かれていて、見切り板(バランス板)の高さも取付位置も指定がない——建築化照明3方式のうち、コーブ・コーニスに比べて施工情報が少ないのがバランス照明です。壁の中段に光源を置くため、上下2方向の配光・視線からの遮光・上下の明るさバランスという、コーブ照明には無い検討項目が加わります。本記事では、バランス板の寸法目安、上向き/下向きテープの選定、配線・調光の分け方を、施工業者・内装業者の設計目線で整理します。

バランス照明とは(コーブ・コーニスとの違い)

バランス照明は、壁面に取り付けた見切り板(バランス板)でLEDテープを隠し、上方(天井側)と下方(壁・カーテン側)の両方へ光を出す建築化照明です。窓上のカーテンボックスまわり・ホテル客室のベッドヘッド上・洗面の鏡脇など、「壁の中段」に光のラインを作りたい場面で使われます。

方式光源の位置光の向き主な使いどころ
コーブ照明天井際の折り返し内上向きのみ天井を照らし空間を広く見せる
コーニス照明天井際の下がり壁内下向きのみ壁・カーテンの質感を見せる
バランス照明壁の中段(バランス板の裏)上下両方窓上・ベッドヘッドで上下に光を抜く

3方式の使い分けと共通の設計原則(光源を見せない・離隔でムラを消す)はコーブ照明・コーニス照明・バランス照明の違いと作り方で解説しています。本記事はバランス照明に固有の納まりを深掘りします。

用語の注意: 照明制御の分野には「バランス制御」など紛らわしい言葉がありますが、建築化照明のバランス照明は「valance(カーテン上飾り)」が語源で、カーテンボックスの化粧板を光源の遮光板に兼用したのが原型です。窓まわりの造作と一体で検討すると納まりが素直に決まります。

バランス板の寸法・取付位置の目安

バランス照明の生命線は、立った人・座った人どちらの視線からも上下のテープ発光面が見えないことです。光源が壁の中段=目の高さに近い位置へ来るため、コーブ照明より遮光の検討がシビアになります。

バランス板の見付け高さ 150mm前後

上下のテープを両方隠せる板の高さの目安

板下端の取付高さ FL+1800mm以上

一般的な視線より上に置き下向きテープの見えを防ぐ

壁からの持ち出し 100〜150mm

上下とも光のグラデーションを滑らかにする離隔

天井から板上端まで 400〜600mm

近すぎると上方の光が天井の明るい帯になる

寸法決定の手順

  1. 板下端の高さを決める:室内で最も低い視線(ソファ・ベッドに座った状態)を想定し、下向きテープが見えない高さに板下端を置きます。立位中心の空間ならFL+1800mm以上が目安です。
  2. 天井との距離を確認する:板上端から天井までが400mm未満だと、上向きの光がすぐ天井に当たり「明るい帯」になりがちです。天井高2400mmの居室では、板の位置が自然と窓上(FL+1800〜2000mm)に収まります。
  3. 持ち出しと板見付けを決める:壁から100〜150mm持ち出し、上下テープと配線・アルミフレームが納まる見付け150mm前後を確保します。
  4. 仮点灯で確認する:本固定前に上下とも点灯し、想定視線からの見え・天井と壁の光の伸びを確認してから固定します。

カーテンボックス兼用のとき: ボックスの奥行きはカーテンひだ+レール2本で最低150〜200mm必要です。テープをレールと同じ溝に入れると開閉で配線を傷めるため、照明用の仕切りを1枚立てて配線・テープゾーンを分けると後々のトラブルを防げます。

上向き・下向きテープの選定と明るさバランス

バランス照明では上下で照らす対象までの距離が大きく違います。上向きは天井まで400mm以上あるのに対し、下向きは壁・カーテンまで100mm程度。同じテープを上下に貼ると、ほぼ確実に「下だけ明るい」仕上がりになります。

選定項目上向き(天井側)下向き(壁・カーテン側)
照らす面までの距離400〜600mm程度100〜150mm程度
W/mの目安高出力寄り(例: 10W/m級)低〜中出力(例: 5W/m級)または調光で絞る
テープ種別上下とも高密度COB推奨(粒感・ホットスポット防止)
色温度上下で必ず揃える(客室2700〜3000K/店舗3500K前後が目安)
演色性標準でも可カーテン・壁の質感を見せるならRa90前後
調光上下別回路+2ch調光器が原則(竣工後に比率を追い込める)

W/mから明るさを見積もる考え方はW/mと明るさの目安、COBテープの選び方はCOBとSMDの比較を参照してください。

上下の点灯バランスの追い込み方

  • 2回路に分ける:上向き・下向きを別回路にし、調光器で個別に絞れるようにします。引き渡し時に「上7:下3」など空間に合わせて追い込めます。
  • 1回路しか取れない場合:テープのW/mで差を付けます(上10W/m・下5W/mなど)。ただし竣工後の調整は利きません。
  • 下向きの白飛び対策:カーテンまでの距離が近い場合、板の内側にテープを奥引き(壁から遠い側に貼る)して光を斜めに当てると、上端の白飛びが和らぎます。

配線・電源の納まり

バランス照明は壁の中段に電源線を持ってくる必要があり、配線ルートの計画がコーブ照明より重要です。

  • 電源位置:24V電源(PSU)は点検できる位置(天井裏・造作内の点検口・家具内)に置き、板内には入れないのが原則です。板内は狭く熱がこもり、故障時の交換もできません。
  • 渡り配線:壁内配管(PF管など)で板の裏へ2回路分のDC線を立ち上げます。改修で壁内を通せない場合は、モールで縦に落とすルートをあらかじめ意匠側と合意しておきます。
  • 電圧降下:窓上で長尺(4〜5m超)になる場合は24V品+必要に応じて両端給電を計画します。詳細は電圧降下と対策を参照してください。
  • 放熱:上下ともアルミフレームに貼り、板内に空気の逃げを確保します。密閉した木製ボックス内に裸貼りすると寿命が縮みます。

AC100V配線が絡む場合: 壁内のAC100V配線工事・スイッチ結線は電気工事士の資格範囲です。造作・DC側の施工と担当を分ける場合は、責任分界点(どこからが電気工事か)を着工前に決めておくと現場が止まりません。詳細はLEDテープ工事と電気工事士の範囲を参照してください。

バランス照明 設計・施工チェックリスト

  • 板下端が想定視線より上(立位中心ならFL+1800mm以上)にある
  • 座った視線からも下向きテープの発光面が見えないことを確認した
  • 天井から板上端まで400mm以上を確保し、天井の明るい帯を防いだ
  • 壁からの持ち出し100〜150mmで上下のグラデーションを確保した
  • 上下を別回路に分け、2ch調光で明るさ比を調整できるようにした
  • 上下とも高密度COB+アルミフレームで粒感と放熱に対処した
  • 色温度を上下で揃えた(上下で違う色温度を混在させていない)
  • 電源(PSU)を点検可能な位置に置き、板内に封じ込めていない
  • カーテンボックス兼用時は照明ゾーンとレールゾーンを仕切った
  • 本固定前に上下同時に仮点灯し、映り込み・白飛び・色ムラを確認した

まとめ

ポイント内容
方式の特徴壁中段のバランス板で光源を隠し、上下両方向へ配光する建築化照明
板の寸法見付け150mm前後・板下端FL+1800mm以上・持ち出し100〜150mm
天井との距離板上端から天井まで400〜600mmで明るい帯を防ぐ
上下の明るさ距離差があるため同一テープはNG。別回路+2ch調光が原則
配線・電源PSUは点検できる位置へ。壁中段への配線ルートを着工前に確定

バランス照明は「視線からの遮光」と「上下の明るさバランス」の2点さえ押さえれば、窓まわり・ベッドヘッドの付加価値提案として武器になります。板の寸法と配線ルートを設計段階で確定し、仮点灯で追い込んでから本固定してください。

よくある質問

バランス照明とはどんな照明ですか?コーブ・コーニスとの違いは?
バランス照明は、壁面(多くは窓上やベッドヘッド上)に取り付けた見切り板(バランス板)でLEDテープを隠し、上方(天井側)と下方(壁・カーテン側)の両方へ光を出す建築化照明です。天井際から上向きに照らすコーブ照明、天井際から下向きに壁を照らすコーニス照明に対し、バランス照明だけが壁の中段から上下両方向に配光します。窓際に上下の光の抜けを作れるため、ホテル客室・住宅のカーテンボックスまわりでよく使われます。
バランス板(見切り板)の高さと取付位置の目安は?
バランス板の高さ(見付け)は150mm前後を目安に、立った人・座った人どちらの視線からも上下のLEDテープ発光面が見えないことを基準に決めます。取付高さは床から1800mm以上(一般的な視線より上)に板の下端が来るようにすると、下向きテープの映り込みを防ぎやすくなります。壁からの持ち出し(離隔)は100〜150mm程度を確保すると上下とも光のグラデーションが滑らかになります。天井までの残り距離が400mm未満だと上方の光がすぐ天井に当たって明るい帯になりやすいため、天井から板上端まで400〜600mm程度を確保するのが無難です。最終的には仮点灯し、想定する視線高さでテープが見えないことを確認して寸法を確定してください。
バランス照明の上下のLEDテープは明るさを変えるべきですか?
上下同じテープ・同じ明るさにすると、照らす面までの距離が近い下側(壁・カーテン)だけが明るく見え、バランスが崩れがちです。基本は上下を別回路に分け、個別に調光できるようにしておくのが確実です。回路を分けられない場合は、上向きに高出力(W/mの大きい)テープ、下向きに低出力のテープを使い分ける方法もありますが、竣工後の微調整が利かないため、調光器2回路での施工をおすすめします。上下で色温度を変えるとちぐはぐな印象になるため、色温度は揃えるのが原則です。

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