色温度バラバラの蛍光灯・白熱灯混在は和の統一感を壊し、温泉周辺の高湿度で防湿非対応の照明は錆・腐食故障を繰り返す。Ra90電球色調光LEDとIP65防湿仕様で解決した全20室旅館の施工記録。
今回の対象は関東近郊の温泉地に立地する全20室・延床1,200㎡の和風旅館です。客室10畳〜15畳・食事処・玄関・廊下・露天温泉・庭園の多様なゾーンで構成されており、開業から20年以上が経過し照明器具が老朽化。白熱球・蛍光灯・初期世代のLED電球が混在して色温度がバラバラになっていました。
特に問題だったのが露天温泉の照明です。一般的なIP20仕様のダウンライトが設置されており、蒸気と水しぶきで腐食が進み年に2〜3回の緊急交換が発生。高所での夜間作業は安全面のリスクも抱えていました。客室照明も調光機能がなく、就寝前の落ち着いた雰囲気づくりができないとの宿泊客の声もありました。
全照明を2700K電球色・Ra90以上のLEDに統一することで、館内どこを歩いても一貫した「和の温かみ」を演出できるようになりました。露天温泉にはIP65防湿仕様を採用し、設置後18か月間で器具故障ゼロを達成。緊急交換コストと夜間高所作業が完全になくなりました。
| 項目 | スペック | 選定理由 |
|---|---|---|
| 色温度(全館統一) | 2,700K(電球色) | 和室・廊下・食事処の情緒を一貫して演出 |
| 演色性 | Ra90以上 | 和食の色・浴衣・木材・漆器の質感を正確に再現 |
| 客室調光 | 1〜100%無段階 | 就寝前の間接照明から起床後の明るさまで対応 |
| 客室ダウンライト | COB LED 12W Ra90 / 2700K | 広角均一照射で和室の雰囲気を壊さない |
| 間接照明 | 高演色LEDテープ 2700K | 床の間・欄間・天井廻り縁の陰影演出 |
| 露天温泉 | IP65防湿ダウンライト 10W | 蒸気・水しぶき環境での長期耐久性確保 |
| 庭園・外構 | IP65スポットライト 8W / 2700K | 庭石・竹・植栽へのウォームアップライト |
| 廊下・共用部 | 調光対応ダウンライト 8W / 2700K | 深夜の足元灯として10%調光で省エネ待機 |
① 色温度の全館統一が最重要
旅館でLED化に失敗する最大の原因は「安いLEDを部屋ごとにバラバラに導入した結果、色温度が混在して安っぽく見える」ケースです。今回は全20室・全共用部を2700K電球色に完全統一。電球色は白熱灯の後継として違和感がなく、木材・漆器・畳の質感を最も自然に引き出します。
② 温泉周辺は必ずIP65以上を選ぶ
露天温泉・大浴場は一般的なIP20〜IP44仕様では数年以内に腐食・漏電が発生します。蒸気と水しぶきが常時発生する環境ではIP65(防塵完全防護・水噴流防水)が最低ライン。今回採用した防湿ダウンライトは設置後18か月間で故障ゼロ。以前は年間3〜4回発生していた緊急交換が完全になくなりました。
③ 客室調光で滞在体験を差別化
旅館の宿泊客が求める照明は「チェックイン直後の明るさ」「夕食時の落ち着いた光」「就寝前の間接照明」と時間帯によって異なります。1〜100%無段階調光LEDをベッドサイドパネルから操作できる仕組みを導入することで、宿泊者が自分好みの光環境を作れるようになりました。
| 項目 | 旧(白熱・蛍光混在) | 新(LED統一) |
|---|---|---|
| 照明消費電力(全館) | 約 14,000W | 約 4,900W |
| 年間電力料金(照明分) | 約 59万円 | 約 21万円 |
| 年間削減額 | ▲38万円(電気代) | |
| 緊急交換・保守コスト(年間) | 約 12万円 | 約 1万円 |
| 初期投資(概算) | — | 約 110万円 |
| 投資回収期間 | 約 3.0年(電気代+保守合計) | |
※電力単価28円/kWh、年間稼働4,000時間で試算。
旅館・温泉旅館のLED化で最初に取り組むべきは「色温度の全館統一」と「温泉周辺の防湿仕様選定」です。この2点を誤ると、省エネ効果が出ても和の雰囲気が壊れる・温泉周辺の照明が短期間で故障するという問題が残ります。
Ra90以上の2700K電球色を全館統一し、露天温泉にIP65防湿仕様を採用することで、情緒ある空間演出と長期的なランニングコスト削減を同時に実現できます。初期投資110万円に対し年間36万円超の削減(電気代+保守費)で3.0年以内に回収。その後は年間36万円が純粋な収益改善として積み上がります。