雨漏り・結露・上階からの漏水・清掃時の水はね——施工後のLEDテープに水が入る事故は、屋外サインだけでなく屋内の間接照明でも起こります。このとき現場で最初に問われるのは「乾かせば使えるのか、交換すべきなのか」の判断です。誤って通電を続けると、電食(電気分解を伴う腐食)が進んで被害が拡大し、最悪は短絡・ブレーカートリップ・発煙に至ります。本記事では、浸水発見直後にやること・浸水経路の特定・復旧可否の判断基準・乾燥と部分交換の手順・再発防止策を、施工業者が現場でそのまま使える形で整理します。
最初の10分でやること(通電停止と被害確認)
- 回路の電源を切る:調光器・スイッチのOFFではなく、電源(PSU)の一次側(コンセント・ブレーカー)で確実に遮断します。水が残ったままの通電は電食を分単位で進行させます。
- 漏電の有無を確認する:漏電遮断器(ELB)が落ちていないか分電盤を確認します。落ちていた場合、原因未特定のままの再投入は厳禁です(漏電ブレーカーが落ちる原因参照)。
- 水源を止める:雨漏り・配管漏れなど供給が続いている場合は、テープの処置より先に水源対応を優先します。
- 被害範囲を記録する:濡れた区間・水滴の残る箇所・変色部をスマホで撮影します。保険・元請報告・メーカー相談のいずれでも写真が必要になります。
- 電源(PSU)の被水を確認する:テープより先に電源の状態を見ます。非防水電源が濡れていたら、その個体は乾燥再使用せず交換対象とします(理由はFAQ参照)。
厳禁:「点くかどうか試しに通電してみる」は最も被害を広げる行為です。水分が残った状態の通電は、その瞬間は点灯しても銅箔・はんだの腐食を確実に進めます。通電テストは乾燥と絶縁確認が終わってからです。
浸水経路の特定
復旧しても浸入経路を塞がなければ再発します。LEDテープの浸水は、被覆本体の破れよりも「防水が途切れる場所」=端末・接続部からの浸入が大半です。
| 浸入箇所 | 特徴的な症状 | 確認方法 |
|---|---|---|
| カット端・エンドキャップ部 | 端部から数十cmだけ不点灯・変色 | キャップの浮き・シーラント充填の有無を目視 |
| コネクタ・はんだ接続部 | 接続部をまたいだ先が全滅・接続部の発熱跡 | コネクタを開けて内部の水滴・緑青を確認 |
| 被覆の傷・ピンホール | 途中の1点から左右に変色が広がる | 被覆表面をなぞり、固定ビス・クリップ跡を重点確認 |
| チューブ内の結露 | 浸水源がないのにチューブ内面が曇る・水滴 | 温度差の大きい場所(冷蔵・屋外夜間)で発生。結露対策参照 |
| 電源・接続ボックス内 | テープ無傷で全回路が不点灯 | ボックス内の水たまり・ケーブル引込部の緩みを確認 |
屋外でIP65品を使っていて浸水した場合は、そもそも等級選定が現場条件(水の滞留・冠水)に合っていない可能性があります。等級の考え方はIP防水等級の選び方を参照してください。
復旧可否の判断基準
「乾燥して再使用」か「交換」かは、次の3点で判断します。
判断基準1:通電中に濡れたか、無通電で濡れたか
| 状況 | 判断 | 理由 |
|---|---|---|
| 無通電で短時間の被水(施工中の雨など) | ○ 乾燥→測定→再使用可 | 電圧が掛かっていなければ電食は進まない |
| 通電中に被水・点灯したまま濡れていた | △〜× 原則交換 | 電食が進行済み。一時復旧しても数週間〜数ヶ月で再故障しやすい |
| 被水期間が不明(気付いたら濡れていた) | ×側で判断 | 腐食の進行度が読めない。引き渡し物件では交換が安全 |
判断基準2:緑青(ろくしょう)の有無
基板の銅箔・はんだ部・コネクタピンに緑色〜青緑色の粉状のサビ(緑青)が出ていたら、その区間は乾燥しても交換です。緑青は腐食が進行した結果であり、除去しても内部の銅箔痩せは戻りません。一時的に点灯しても接触抵抗の増大→発熱→断線と進みます。
判断基準3:絶縁抵抗の測定値
乾燥後、絶縁抵抗計(メガー)で回路と外部(アルミフレーム・金属下地・アース)間の絶縁を確認します。
測定前に電源・調光器・コントローラーを必ず回路から切り離してください(半導体機器に試験電圧を掛けると破損します)。測定手順の詳細は絶縁抵抗測定(メガー)の手順を参照してください。メガーがない場合でも、テスターの抵抗レンジで回路−フレーム間が導通していないことの確認は最低限行います(テスターでの点検方法)。
乾燥・復旧の手順(無通電被水で緑青なしの場合)
- 回路から切り離す:電源・調光器からテープを外し、コネクタ類も分解して単体にします。
- 水分を除去する:目に見える水滴を乾いたウエスで拭き取り、コネクタ内部・エンドキャップ内は外して水を切ります。
- 自然乾燥24〜48時間:送風機・サーキュレーターで風を当てます。ヒートガンや高温ドライヤーの至近距離加熱は被覆・チップを傷めるため、使う場合も低温・距離を取ってください。
- 目視点検:銅箔・はんだ部・抵抗周りに変色・緑青・白い析出物がないかを確認します。異常があればその区間は交換に切り替えます。
- 絶縁測定:DC250Vレンジで1MΩ以上を確認します。
- 単体通電テスト:現場復旧の前に、電源単体につないで全長の点灯・明るさムラ・部分不点灯を確認します。
- 浸入経路を処置してから復旧:エンドキャップの再シール・防水コネクタへの交換・被覆傷の補修(防水処理の施工手順)を済ませてから再設置します。
被害区間だけ交換する(部分交換)
全長交換が難しい場合、被害区間だけを切り出して差し替える部分交換が可能です。
- 被害区間の両側の健全なカットラインで切断します(腐食は見えている変色部より先に進んでいることがあるため、変色端からカットライン1〜2個分余裕を取る)
- 同一型番・同一色温度のテープを同寸法で用意します。別ロット混在は明るさ・色の差が出ることがあります(色ムラの原因)
- 接続は防水コネクタまたは、はんだ+熱収縮チューブ+シーラントで行い、接続部の防水を復元します
- 屋外・湿潤環境では接続部が再び弱点になるため、接続箇所数が増える場合は全長交換のほうが結果的に安くつくことも見積り比較してください
切断・再接続の基本はカット失敗の修理ガイドと共通です。
再発防止策
| 浸入経路 | 再発防止策 |
|---|---|
| カット端・エンドキャップ | キャップ内にシリコンシーラントを充填してから被せ、外周もシール。硬化前の通電をしない |
| コネクタ部 | 屋外・湿潤環境は防水コネクタ(IP67相当)に統一。非防水コネクタ+自己融着テープの多重巻きは応急処置と割り切る |
| 被覆の傷 | 固定はクリップ・フレームを使い、被覆へのビス・タッカー直打ちをしない |
| 水の滞留 | 水平面への設置を避け、フレームに水抜き勾配を付ける。滞留が避けられない場所はIP67/68品に変更 |
| 結露 | 温度差の大きい環境(冷蔵・サウナ周り・屋外)は防湿・結露対策を設計に入れる |
| 電源ボックス | 屋外電源はIP67品+ケーブルグランドの締め込み確認。ボックスは下向き開口・水抜き穴を設ける |
浸水対応チェックリスト(現場携行用)
- 一次側(ブレーカー・コンセント)で通電を遮断した
- 漏電遮断器の動作有無を分電盤で確認した
- 被害範囲を写真で記録した
- 電源(PSU)の被水有無を確認し、被水した非防水電源は交換と判断した
- 浸入経路(端末・コネクタ・被覆傷・結露・ボックス)を特定した
- 通電中被水か無通電被水かをヒアリング・状況から判定した
- 銅箔・はんだ・コネクタピンの緑青の有無を目視した
- 電源・調光器を切り離してから絶縁抵抗を測定した(DC250V・1MΩ以上)
- 単体通電テストで全長点灯・ムラなしを確認した
- 浸入経路の防水処置を済ませてから復旧した
- 処置内容・測定値・交換区間を報告書に記録した
まとめ
| 判断ポイント | 基準 |
|---|---|
| 最初の行動 | 試験通電せず、一次側で遮断→水源対応→記録 |
| 再使用の条件 | 無通電被水+緑青なし+乾燥後の絶縁1MΩ以上の3つが揃うこと |
| 交換の条件 | 通電中被水・緑青あり・被水期間不明・シリコンチューブ内への浸水はいずれかで交換 |
| 電源(PSU) | 非防水電源の被水は乾燥再使用せず交換 |
| 再発防止 | 端末シール・防水コネクタ・水抜き勾配・環境に合ったIP等級への見直し |
浸水対応の要点は「通電しないで判断する」ことに尽きます。乾燥・絶縁測定・緑青確認の3ステップを踏めば、再使用と交換の線引きは現場で明確にできます。判断に迷う区間は、引き渡し物件であれば交換側に倒すのが、再訪問コストまで含めた最も安い選択です。
よくある質問
交換・補修用のLEDテープ・防水部材・電源
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