LED電源(スイッチング電源)は、構造上どうしても高調波電流を発生させます。1台や数台なら問題になりにくくても、看板・天井・商業施設などで多灯・大規模に設置すると、中性線の過電流や幹線・受電設備への影響が無視できなくなります。本記事では、施工業者・電気工事業者向けに高調波と力率(PF)の違い、THD(電流歪み率)の読み方、JIS C 61000-3-2のクラス区分、第3次高調波が中性線に重畳するしくみ、高力率(アクティブPFC)電源の選び方を整理します。台数の多い案件で「単価は安いが配線コストが膨らむ」失敗を避けるための知識です。

1. 高調波・力率とは(用語の整理)

まず混同しやすい用語を分けます。力率は電力をどれだけ有効に使えているか、高調波は電流波形の歪み、THDはその歪みの割合を表します。LED電源では力率低下の主因が高調波なので関係は深いものの、別の指標です。

力率(PF)
皮相電力に対する有効電力の割合。1に近いほど無駄が少ない。高力率品は0.9以上が目安。
高調波電流
基本波(50/60Hz)の整数倍の周波数を持つ歪み成分。第3・5・7次などが代表。
THD(電流歪み率)
基本波に対する高調波成分の割合。小さいほど波形がきれい。低THD=高調波が少ない。
なぜLED電源で高調波が出るのか
スイッチング電源は交流を整流・平滑して直流を作るため、電流が波形の山の部分だけに集中して流れがちです。この尖った電流波形が高調波の正体です。アクティブPFC(力率改善回路)を内蔵した電源は、電流を電圧波形に近づけて高調波を抑え、力率を高めます。

2. データシートの「力率・THD・規格」の読み方

電源選定では、データシートの該当欄を見て高調波の素性を判断します。代表的な表記と判断目安を一覧にしました。

表記 意味 判断目安
Power Factor(力率/PF) 有効に使えている電力の割合 0.9以上が高力率。0.5前後は無PFCの安価品
THD(電流歪み率) 高調波成分の割合 低いほど良い。多灯設置は低THD品を優先
Active PFC 能動的に力率を改善する回路 記載があれば高調波が抑えられている目安
JIS C 61000-3-2 高調波電流の限度を定める国内規格 照明はクラスC。適合表記を確認
IEC 61000-3-2 対応する国際規格(海外向け) 輸入品はこの表記の場合あり
⚠ 「安い無PFC電源」は台数が増えると効いてくる
無PFCの安価な電源は力率が低く(0.5前後)、同じ消費電力でも流れる電流が大きくなります。1〜2台では問題なくても、多数並べると幹線電流・中性線電流が増え、配線サイズやブレーカー、受電設備に響きます。単価だけで選ぶと、配線コストや是正工事で結局高くつくことがあります。

3. 多灯設置の落とし穴:第3次高調波と中性線

大規模設置で特に注意したいのが中性線(ニュートラル)です。三相4線式で各相に非線形負荷を分けても、第3次高調波は打ち消されずに中性線へ集まります。

項目 通常の負荷(線形) LED電源など(非線形)
各相のバランス時の中性線電流 ほぼ打ち消されて小さい 第3次高調波が重畳し大きくなり得る
中性線の発熱 小さい 相線より大きくなる場合がある
幹線・トランス 影響小 高調波損失・温度上昇に注意
対策の方向 標準設計でよい 低THD電源・中性線強化・負荷分散・必要ならフィルタ
第3次高調波が中性線に集まるしくみ(要点)
基本波の電流は三相が120度ずつずれているため中性線で打ち消し合いますが、第3次高調波は各相とも同位相になり打ち消されず足し合わさって中性線に流れます。このため各相の電流が小さくても、中性線にそれを上回る電流が流れることがあります。台数の多いLED負荷では設計時に見込んでおく必要があります。

4. 設計・選定の進め方

規模を把握する 総灯数・総容量と、単相か三相か、回路の分け方を確認。小規模なら高力率電源の選定で十分なことが多い。
高力率・低THDの電源を選ぶ データシートで力率0.9以上・低THD・アクティブPFC・JIS C 61000-3-2適合を確認。発生源を減らすのが基本。
負荷を相間で均等に振る 三相では各相にできるだけ均等に負荷を割り付け、不平衡を抑える。
中性線・幹線を見込む 多灯設置では中性線を相線と同等以上に考える。幹線・ブレーカー容量も高調波分を見込んで余裕を取る。
大規模は電気設計者と連携 受電設備・トランスへの影響が想定される規模では、必要に応じて高調波フィルタの追加を含め電気設計者とすり合わせる。
多灯設置の高調波チェックリスト
□ 電源の力率(PF)が0.9以上か
□ THD(電流歪み率)が低い品か
□ アクティブPFC内蔵か
□ JIS C 61000-3-2(または相当規格)に適合しているか
□ 三相で負荷を各相均等に割り付けたか
□ 中性線を相線と同等以上に見込んだか
□ 幹線・ブレーカーに高調波分の余裕を取ったか
□ 大規模案件で電気設計者と影響を確認したか

よくある質問

力率(PF)と高調波(THD)は何が違うのですか?
力率は電力をどれだけ有効に使えているか(皮相電力に対する有効電力の割合)を表す指標で、高調波は電流波形が正弦波からどれだけ歪んでいるかを表します。LED電源のようなスイッチング電源では、力率の低下の主因が電流波形の歪み(高調波)であるため両者は密接に関係しますが、別の指標です。THD(総合電流歪み率)は高調波成分の割合を示します。データシートでは『力率0.9以上』のような力率値と、『THD20%以下』のような歪み率の両方を確認すると、電源の素性が分かります。高力率(アクティブPFC内蔵)の電源は、力率が高くTHDも低い傾向があります。
LED電源をたくさん並べると、なぜ中性線(ニュートラル)が問題になるのですか?
三相4線式で各相にLED電源のような非線形負荷を分けて接続すると、各相に生じる第3次高調波(基本波の3倍の周波数成分)は、基本波と違って中性線で打ち消し合わず、逆に足し合わさって中性線に流れます。このため、各相の電流が小さくても中性線にそれを上回る電流が流れることがあり、中性線の発熱・過電流の原因になります。多灯・大規模なLED設置では、中性線を相線と同等以上の太さにする、高力率・低THDの電源を選んで高調波そのものを減らす、負荷を相間で均等に振り分ける、といった対策が有効です。受電設備やトランスへの影響も含め、規模が大きい案件では電気設計者と早めにすり合わせてください。
高調波を抑えるには、電源選定で何を見ればよいですか?
まずデータシートで力率(PF)とTHD(電流歪み率)を確認し、力率が高く(目安0.9以上)THDが低い電源を選びます。多くは『アクティブPFC内蔵』と表記され、これが高調波を能動的に抑える回路です。次に該当する規格適合(日本ではJIS C 61000-3-2、海外向けはIEC 61000-3-2など)を確認します。大規模設置では、高力率電源にして発生源を減らすのが基本で、それでも幹線・受電側で高調波が問題になる場合はフィルタの追加を検討します。なお安価な無PFC電源は力率が低くTHDが大きいため、台数が増えると幹線設計に効いてきます。台数の多い案件ほど、単価だけでなく力率・THD・規格適合まで含めて選ぶことが結果的に配線コストを抑えます。

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