1. 温浴施設のLED照明が一般施設と大きく異なる理由
温浴施設は蒸気・湿気・高温・薬品(塩素)が複合する過酷な環境です。一般施設向けLEDテープをそのまま使うと、浸水ショート・樹脂劣化・腐食による早期故障を招きます。施工前に以下3点を必ず確認してください。
- 防水等級: エリアごとに適切なIPコードを選択する
- 耐熱性: サウナ室は特殊仕様製品に限定する
- 薬品耐性: プールやジャグジーの塩素・酸に強いシリコン被覆を選ぶ
2. エリア別設計基準(防水等級・色温度・照度)
温浴施設は用途別に7つのエリアに分かれ、それぞれ異なる防水等級と色温度が求められます。
| エリア | 推奨IP等級 | 色温度 | 目標照度 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 浴槽周辺・洗い場 | IP67 | 2700K〜3000K | 100〜150lx | 温暖色で湯気・肌を美しく見せる |
| 露天風呂 | IP67(UV耐性) | 2700K〜3000K | 30〜80lx | 落ち着いた雰囲気・UV劣化対策必須 |
| サウナ室(60℃以下エリア) | IP65 | 2700K | 50〜80lx | 耐熱85℃以上の製品を選定 |
| サウナ室(80〜100℃) | LED不可 | — | — | サウナ専用耐熱照明器具を使用 |
| 脱衣所・ロッカー | IP44 | 3000K〜3500K | 200〜300lx | 飛沫対策・衣類の色が正確に見える照度 |
| ロビー・受付 | IP20〜IP44 | 3000K〜4000K | 300〜500lx | 明るく清潔感・案内看板の視認性確保 |
| プール・ジャグジー | IP68 | 6500K or RGB | 用途による | 塩素耐性シリコン被覆・水中設置は専用品 |
3. 防水等級別 LEDテープ選定ポイント
温浴施設向けに推奨するLEDテープのスペック一覧です。
| 防水等級 | 推奨電圧 | 被覆素材 | 耐熱上限 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| IP67(充填型) | 24V | シリコン充填 | 60〜80℃ | 浴槽周辺・露天・屋外軒下 |
| IP65(チューブ型) | 24V | シリコンチューブ | 60℃ | サウナ低温エリア・洗面 |
| IP68(完全防水型) | 24V | 二重シリコン充填 | 60℃ | プール壁面・ジャグジー縁 |
| IP44(飛沫防止型) | 12V or 24V | コーティング | 50℃ | 脱衣所・ロッカー・ロビー |
電源(PSU)配置の注意点
浴室内へのPSU設置は避け、防湿キャビネット内(脱衣所壁面など)にまとめて設置するのが鉄則です。配線は防水コネクターを使い、浴室貫通部には防水グロメットを必ず装着します。1回路あたりのテープ長は圧力降下を考慮して最大10m以内を目安とし、長尺が必要な場合は電源を複数分散させます。
4. 施工費試算(スーパー銭湯 延床800m²規模)
延床800m²・浴室5エリア・サウナ2室・ロビー+脱衣所を備えたスーパー銭湯でのLED全面改修の費用試算です。
PSU 24V/150W × 3台
防水コネクター・グロメット一式
小計: 約22〜28万円
PSU 24V/100W × 2台
屋外用防水接続一式
小計: 約14〜18万円
PSU 24V/60W × 2台
耐熱配線・熱収縮チューブ一式
小計: 約10〜14万円
PSU 24V/200W × 3台
アルミフレーム・配線工事一式
小計: 約28〜36万円
5. 省エネ効果試算(蛍光灯 → LED比較)
既設蛍光灯(Hf蛍光灯32W相当)からCOB LEDテープへ切り替えた場合の電気代削減試算です。
| 項目 | 蛍光灯(従来) | LED(更新後) | 削減効果 |
|---|---|---|---|
| 照明消費電力 | 40kW | 20kW | 50%削減 |
| 1日の照明電力量(12時間営業) | 480kWh | 240kWh | 240kWh削減 |
| 年間電力量 | 175,200kWh | 87,600kWh | 87,600kWh削減 |
| 年間電気代(27円/kWh想定) | 約473万円 | 約237万円 | 約236万円削減 |
| ランプ交換費用(年) | 約30万円 | 約2万円 | 約28万円削減 |
6. 蒸気対策・配線施工のポイント
① 結露対策:下向き配線・ドリップループ
浴室の蒸気が冷えて結露すると、電気配線への侵入リスクがあります。配線はできるだけ下向きに引き下ろす「ドリップループ」を設け、水滴が壁面に沿って流れるよう設計します。コネクター接合部は防水接着剤で追加シールを施します。
② 塩素耐性:ジャグジー・プール周辺
塩素消毒剤が多用されるプールやジャグジー周辺では、二重シリコン被覆のIP68製品を選定します。PVC被覆のテープは塩素で硬化・ひび割れが進むため不適です。接続コネクターは腐食しにくいステンレス製またはPOM樹脂製を選びます。
③ 電源キャビネットの換気
PSUを収めるキャビネットは蒸気が侵入しにくい位置(脱衣所の壁内・天井ピット)に設置し、キャビネット内の換気用フィルターベントを設けて熱がこもらないよう対策します。PSU動作温度が40℃を超えると寿命が著しく短くなります。
④ 防水グロメット・ケーブルグランド
浴室壁貫通部のすべての配管口に防水グロメット(EPDM製)を装着し、隙間はバスコーク等の耐水性シーリング材で封止します。施工完了後は散水試験で漏水がないことを確認します。
7. 施工フロー(温浴施設の場合)
- 現地調査・照度測定: 既設照明の照度・消費電力・防水状況を記録
- エリア別設計書作成: IP等級・色温度・テープ長・PSU容量を確定
- 材料発注: テープ・PSU・アルミフレーム・防水コネクター・グロメット類
- 既設照明撤去・配線確認: 絶縁テスト・接地抵抗測定(電気工事士が実施)
- 電源キャビネット設置: PSU固定・換気ベント設置・分電盤との接続
- テープ取り付け・防水処理: アルミフレームへの圧着・コネクター防水シール・グロメット装着
- 点灯確認・照度測定: 全エリアの照度・色温度・均一性を実測
- 散水試験・最終検査: 防水性能確認・電気安全検査・施設担当者への引き渡し