2027年問題:Hf蛍光灯・Hg蛍光灯は2027年度から製造・輸入が禁止(水銀条約対応)。既存蛍光灯設備の計画的なLED化が介護施設にも求められています。

JIS Z 9110 介護施設の照度基準一覧

JIS Z 9110「照度基準総則」(2010年制定)は、建物用途別の維持照度・最低照度・均斉度の標準値を定めています。介護施設・老人ホーム・特養に適用される主な基準値は以下のとおりです。

室・場所 推奨照度(lx) 最低照度(lx) 均斉度 備考
居室(通常時) 100〜300 75 1/5以上 読書時は300lx以上推奨
廊下(通常時) 50〜100 20 1/5以上 夜間は後述の夜間モード値
廊下(夜間・就寝中) 1〜5 1 転倒防止・足元灯レベル
食堂・食事室 200〜500 100 1/5以上 食品演色性Ra90以上推奨
浴室・洗面所 200〜500 100 1/5以上 防湿型LED必須(IP44以上)
処置室・医務室 500〜1000 300 1/3以上 Ra90以上・フリッカーフリー必須
リハビリ室 300〜750 200 1/5以上 手元作業に対応
エントランス・受付 200〜500 100 1/5以上 来客対応・防犯カメラ撮影適性
階段 75〜150 30 踏面に影ができないよう設計
トイレ・便所 100〜200 75 人感センサー連動推奨

照度測定の方法

照度計(ルクスメーター)を床面から85cm(作業面高さ)に水平に保ち、5点以上計測して平均値を算出します。廊下の均斉度は「最小照度 ÷ 最大照度」で算出し、0.2(1/5)以上であれば合格です。暗部と明部の差が大きい(均斉度が低い)廊下は転倒リスクが高まります。

夜間転倒防止照明の設計原則

介護施設での転倒事故の多くは夜間の廊下・トイレへの移動中に発生します。夜間照明の設計で重要な3点を解説します。

1. 夜間2〜5lxの「足元照明」回路を独立させる

廊下の通常照明(50〜100lx)と夜間照明(1〜5lx)は、別回路で制御することが重要です。タイマー制御またはセンサー連動で21時〜6時に夜間モードへ自動切替する設計が標準的です。

足元照明の設置高さは床面から15〜30cmが最適です。高い位置に設置すると眩しく睡眠を妨害するため、幅木(巾木)埋め込み型または床面近くの連続ライン照明が推奨されます。COBテープ+アルミフレームを幅木レベルに設置することで、点光源のない均一な足元照明を実現できます。

2. 影をなくす均一照度設計

点灯位置が一点集中(ダウンライトのみなど)になると、強い影が生じて高齢者が段差と誤認するリスクがあります。均一照度を実現する方法は2通りです。

照明方法特徴向いている場所
COBテープ連続照明 粒感がなく床面を均一に照らす・夜間2lx調光可能 廊下・居室床際・階段踏面
間接照明(天井反射) グレアが少なく柔らかな光質・影が生じにくい 居室・食堂・共用ラウンジ
ダウンライト+補助照明 施工コストが低い・影対策に補助ライン照明が必要 エントランス・受付

3. 人感センサーの活用と注意点

トイレ・洗面所への動線に人感センサー連動照明を設置すると、夜間の急激な明るさ変化を抑えながら安全を確保できます。ただし、センサーのON/OFFの切り替わりが速すぎると高齢者が驚くため、以下の設定が推奨されます。

認知症対応の照明設計

昼夜リズムを整える色温度調光

認知症入居者の「夕暮れ症候群」(夕方〜夜に不穏・徘徊が増える症状)は、体内時計の乱れと関連しています。昼光色(5000〜6500K)で昼間の覚醒を促し、夕方以降は電球色(2700〜3000K)に切り替えることで昼夜リズムのサポートが期待できます。

時間帯推奨色温度推奨照度目的
午前(6〜11時) 5000〜6500K(昼光色) 300〜500lx 覚醒促進・体内時計リセット
午後(11〜17時) 4000〜5000K(昼白色) 200〜300lx 活動維持・食事・リハビリ
夕方(17〜21時) 2700〜3000K(電球色) 100〜150lx 就寝準備・落ち着き促進
夜間(21〜6時) 2700K以下 1〜5lx(廊下) 睡眠妨害防止・転倒防止

フリッカー(ちらつき)フリーが必須の理由

古い蛍光灯やインバーター方式のLEDは、商用電源の周波数(50/60Hz)に応じてわずかにちらつきます。このフリッカーは通常は目に見えませんが、高齢者・認知症患者・光過敏性を持つ方では、不安感・興奮・頭痛の原因となることが報告されています。

施設照明の選定時は、仕様書の「フリッカー」または「ちらつき」の記載を確認し、Flicker Percent(FP)が5%未満の製品を選ぶことが推奨されます。COBテープ+DC電源構成はACフリッカーが発生しないため、介護施設に適しています。

LED照明の選定基準(介護施設向け)

選定項目推奨スペック理由
演色性(Ra) Ra90以上 顔色・肌色の変化(発熱・チアノーゼ等)を正確に判断するため
フリッカー FP 5%未満 認知症の不穏・興奮を誘発しないため
色温度 調光対応(2700〜6500K) 昼夜リズム調光に対応するため
電源電圧 DC24V 長距離廊下配線での電圧降下を抑えるため
防水規格 浴室はIP44以上・廊下はIP20 浴室の湿気・洗浄水に対応するため
調光方式 PWM調光(1〜100%) 夜間2lxまで滑らかに調光するため
寿命 40,000時間以上 交換頻度を減らし施設管理コストを削減するため

COBテープ vs チップタイプの使い分け

COBテープ:発光点が連続しており粒感がない。廊下・居室の間接照明・幅木照明に最適。
チップ(SMD)タイプ:発光点が点在するため廊下床面に影が生じやすい。ダウンライト補助には適するが、足元照明には不向き。

LED化の施工手順(廊下・居室)

  1. 現状の照度計測:照度計で各室・廊下の現状照度を5点計測し、JIS基準との乖離を確認する。
  2. ゾーン設計:廊下・居室・共用部・夜間照明の4ゾーンに分け、調光回路と通常回路を分離設計する。
  3. 電源容量計算:使用するLEDテープの総ワット数+20%の安全率でDC電源を選定する。廊下20m@12W/mの場合、20m×12W×1.2=288W以上の電源が必要。
  4. 配線・施工:DC24Vは長距離配線(10m超)でも電圧降下が少ないため廊下に適している。幅木レベルに溝切り加工してアルミフレームを埋め込むと仕上がりが美しい。
  5. 調光コントローラー設定:タイマー連動で夜間モード(2〜5lx)と通常モードを自動切替。
  6. 施工後の照度確認:JIS Z 9110の照度基準値と均斉度を照度計で再計測し、設計値に合致しているかを確認する。

導入事例:特別養護老人ホーム680㎡のLED化

施設概要

施設タイプ:特別養護老人ホーム(特養)/床面積:680㎡/主な施工箇所:廊下・居室28室・食堂・浴室・共用部

改修内容

蛍光灯(Hf32W管)からCOBテープ(DC24V・Ra90・フリッカーフリー)に全面交換。廊下に幅木レベルの連続足元照明を設置し、21時〜6時は自動で2lxの夜間モードに切替。昼夜リズム調光(朝5500K・夜2700K)を食堂と共用ラウンジに導入。

夜間転倒インシデント 42%低減
電気代 54%削減
年間削減額 198万円
投資回収 4.2年
夜間廊下照度 2lx維持
Ra値 Ra92達成

よくある質問

Q. 介護施設の照明明るさ基準(JIS Z 9110)はどのくらいですか?

居室:100〜300lx(読書時300lx以上推奨)、廊下:50〜100lx(夜間1〜5lx)、浴室:200〜500lx、食堂:200〜500lx、処置室:500〜1000lxが標準値です。均斉度(最小照度÷最大照度)は廊下で0.2以上が目安です。

Q. 認知症対応の照明設計で重要なポイントは何ですか?

①昼夜リズム調光(昼は5000〜6500K・夜は2700K)、②フリッカーフリー(FP 5%未満)、③均一照度(影・強コントラストをなくす)の3点が最重要です。特に夕暮れ症候群の抑制には夕方以降の色温度を電球色に切り替える昼夜リズム調光が効果的です。

Q. 廊下の夜間照明は何ルクス(lx)にすればよいですか?

JIS基準では夜間廊下の最低照度は1lxです。ただし実務では転倒防止と睡眠妨害のバランスから、床面での照度2〜5lxが推奨されます。幅木照明(床から15〜30cm)にCOBテープを設置し、PWM調光で全点灯の3〜10%レベルに設定する設計が一般的です。

Q. 蛍光灯からLEDに変えると転倒リスクはどう変わりますか?

均一照度の確保と夜間調光制御の組み合わせにより、転倒リスクの低減が期待できます。実際の施設(680㎡・廊下・居室・共用部をLED化)では夜間転倒インシデントが42%低減した事例があります。蛍光灯は2027年度から製造禁止となるため、早期のLED化計画が施設維持管理上も重要です。

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