1. LED発熱のメカニズムと寿命への影響
LEDは電気エネルギーの約70〜80%を熱として放出します(残り20〜30%が光)。この熱をいかに素早くチップから逃がすかが放熱設計の本質です。
ジャンクション温度(Tj)とは
LEDチップの発光接合部の温度を「ジャンクション温度(Tj)」と呼びます。LEDメーカーが公称する定格電流・光束・寿命のデータは、すべてこのTjが特定の温度(通常85℃または105℃)での値です。実使用時にTjが上昇すると:
W/m別・実際の発熱量
LEDテープ1mあたりの発熱量は消費電力とほぼ比例します。以下のチャートで各グレードの発熱量を把握してください。
※発熱量 = W/m × 約0.75(光に変換されない分)で計算
- 12W/m以上のテープを密閉されたアルミ溝に収納するケース(温度が40〜50℃以上になりやすい)
- 木材・石膏ボード・プラスチックなど熱伝導性の低い下地に直貼り
- 夏季の屋外設置や西日が当たる南面(環境温度が40℃を超える可能性)
- 天井裏・電気室など換気が悪い閉鎖空間への施工
2. 熱の流れ(熱抵抗モデル)を理解する
熱はLEDチップ→基板(PCB)→両面テープ→下地材料 の順に伝わります。この経路の「熱抵抗」が低いほど、熱が効率よく逃げてジャンクション温度が下がります。
| 熱経路の箇所 | 熱伝導率の目安 | ポイント |
|---|---|---|
| LEDチップ → 基板(銅パターン) | 高(銅: 385 W/m·K) | COBテープは基板が広く有利 |
| 基板 → 両面テープ | 低(一般粘着: 0.1〜0.5 W/m·K) 高(熱伝導テープ: 1〜6 W/m·K) |
ここが最大のボトルネック。熱伝導両面テープで大幅改善 |
| 両面テープ → 下地材料 | アルミ: 160 W/m·K スチール: 50 W/m·K 木材: 0.15 W/m·K |
アルミが断然有利。木材は放熱路として機能しない |
| 下地材料 → 空気 | 空気: 0.024 W/m·K | 表面積が大きいほど放熱効率UP |
3. アルミチャンネル(放熱フレーム)の選び方
アルミチャンネルはLEDテープを保護するだけでなく、放熱フィンとして機能します。チャンネルの形状・素材・サイズでジャンクション温度は大きく変わります。
- 最も一般的なコの字断面
- 表面への放熱面積が大きい
- 拡散カバー付きで光を柔らかく
- 幅12mm〜17mm品が主流
- 6〜12W/mに最適
- 天井・壁への埋込仕上げが可能
- フランジ部が放熱フィンとして機能
- 下地に密着して放熱効率が高い
- 幅20mm〜30mmが主流
- 12〜20W/mの高発熱品に対応
- 45°・90°の出隅・入隅対応
- 放熱面積は標準Uチャンネルより小
- 高W/mには非推奨(8W/m以下に留める)
- 施工箇所が限られるため補助的に使用
- 接続部に熱溜まりが起きやすい
- 極薄タイプで段差を最小化
- 下地への放熱は良好(密着面積大)
- 上面への放熱は少ない
- 10W/m以下で下地がアルミ・スチールの場合のみ推奨
- 木下地への施工には不向き
W/m別アルミチャンネルのサイズ推奨
| W/m(電力密度) | 推奨チャンネル幅 | 必要放熱面積目安(1mあたり) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 6〜8 W/m | 12mm Uチャンネル以上 | 〜25 cm²/m | 標準環境では問題なし |
| 10〜12 W/m | 17mm Uチャンネル以上 | 30〜40 cm²/m | 密閉環境では1サイズ上を選択 |
| 15 W/m | 20mm Tチャンネル推奨 必須 | 50〜60 cm²/m | 熱伝導テープ必須 |
| 18〜20 W/m | 25mm Tチャンネル推奨 必須 | 65〜80 cm²/m | 環境温度25℃以下での施工推奨 |
4. 施工前に必ず行う発熱量計算
施工前に発熱量を計算し、放熱設計が十分かどうか確認します。以下の手順に従ってください。
-
総消費電力を計算するW/m × テープ全長(m) = 総消費電力(W)。PSU容量計算と同じです。例:10W/m × 30m = 300W
-
発熱量(熱として放出される量)を計算するLEDは電力の約75%を熱として放出します。総消費電力 × 0.75 = 発熱量(W)。例:300W × 0.75 = 225W(=225J/s)
-
チャンネル1mあたりの発熱量を計算する発熱量(W) ÷ テープ全長(m) = W/m発熱量。例:225W ÷ 30m = 7.5W/m。この値で前節の推奨チャンネルサイズを照合
-
環境温度補正を行う施工場所の最大環境温度が30℃を超える場合、チャンネルサイズを1ランク上げるか、施工間隔を空けて放熱面積を確保する
-
施工後に温度確認(サーモカメラ推奨)通電後30分で熱が安定します。サーモカメラでチャンネル表面温度を測定。表面温度60℃以下(環境温度+35℃以下)が目安。超えている場合は放熱対策を追加
総消費電力 = 12 W/m × 30m = 360 W
発熱量 = 360 × 0.75 = 270 W
1mあたり発熱 = 270 ÷ 30 = 9 W/m
→ 20mm Tチャンネル推奨(熱伝導テープ必須)
# 施工後確認基準
チャンネル表面温度 ≤ 環境温度 + 35℃(≤ 60℃ @ 25℃環境)
5. 設置環境別の放熱対策
| 設置環境 | 温度リスク | 推奨対策 |
|---|---|---|
| 開放天井(空調あり) | 低 | 標準アルミUチャンネル。12W/m以下は特別な対策不要 |
| 密閉天井裏(換気なし) | 高 | 大型Tチャンネル必須。W/mを1ランク下げる(12→10W/m等)か電源の調光機能で70〜80%駆動 |
| 屋外(直射日光) | 非常に高 | IP65以上のシリコンコーティング品。環境温度が40℃以上になるため12W/m以下に抑制。日射遮蔽カバー設置推奨 |
| 什器・棚の中(密閉什器) | 高 | 6〜8W/m以下に制限。熱伝導テープでアルミ什器に熱を逃がす。30分以上の連続点灯には強制空冷(小型ファン)検討 |
| 冷蔵ショーケース周辺 | 低(環境温度が低い) | 低温でLED効率が上がりジャンクション温度は下がりやすい。ただし結露対策(IP65以上)が必要 |
| 調理場・厨房 | 非常に高 | 環境温度が40〜50℃になりやすい。8W/m以下に制限。IP65必須。電源は厨房外に設置 |
6. COBテープの熱特性と有利な理由
従来のSMD(個別パッケージ)テープに比べ、COB(Chip on Board)テープは熱管理面で大きな優位性があります。
① 基板面積が広い:チップが基板上に直接実装されるため、発熱が基板全体に分散されます。SMDのように局所的な高温点(ホットスポット)が発生しにくい。
② 封止材(蛍光体シート)が放熱材を兼ねる:COBの均一な蛍光体コーティングは熱分散にも貢献します。
③ 低電流駆動:COBは多数のチップを並列駆動するため1チップあたりの電流が小さく、Tjの上昇が緩やかです。
| 比較項目 | COBテープ | SMD 2835テープ |
|---|---|---|
| 発熱の分散性 | 基板全面に均一分散 ◎ | チップ個別に集中 △ |
| ジャンクション温度の上昇速度 | 緩やか ◎ | 速い(局所過熱)△ |
| チャンネルへの密着性 | 高(平坦な基板)◎ | チップが凸で密着度が低い △ |
| 同W/mでのジャンクション温度 | 低い(約5〜10℃差)◎ | 高め △ |
| 光束維持率(L70) | 50,000h以上が多い ◎ | 30,000〜50,000h △ |
7. 現場でよくある熱管理の失敗5パターン
- 失敗①:木下地に直貼りして半年で暗くなった
木材の熱伝導率は0.15 W/m·K程度でほぼ断熱材。10W/m以上のテープを木下地に直貼りするとジャンクション温度が急上昇します。対策:必ずアルミチャンネルを介して木下地に固定。 - 失敗②:テープを重ねて貼り二倍の熱が発生した
光量不足の対策でテープを2層重ねする施工が散見されますが、熱が逃げる先がなく最悪の放熱設計です。対策:W/mを上げた単層に変更するか、テープ間に放熱シートを挟む。 - 失敗③:屋外設置で夏季に点灯しなくなった
サーマルシャットダウン機能付き電源(PSU)は過熱で出力をカットします。テープ自体の熱損傷より先にPSUが落ちるケースも多い。対策:屋外用PSUを使用し日射を避けた設置場所を確保。 - 失敗④:調光なしで1年中100%点灯して劣化が早まった
業務施設で「明るさを節約して70%程度に抑えたい」という要望に調光を使わず我慢することがあります。調光器(PWMまたは0-10V)を使って70〜80%駆動するだけでジャンクション温度を10〜15℃低下させ、寿命を大幅に延ばせます。 - 失敗⑤:チャンネルのカバーを密閉型にして放熱を妨げた
意匠性を優先してカバーを密閉すると内部温度が急上昇します。対策:ミルキー拡散カバーでも両端に通気スリットがあるタイプを選ぶ、またはオープンカバー型にする。
まとめ:放熱設計チェックリスト
- W/m × 全長 で総消費電力を計算し、発熱量(×0.75)を把握しているか
- W/mに対して十分なサイズのアルミチャンネルを選定しているか
- 12W/m以上の施工に熱伝導両面テープを使用しているか
- 木下地・プラスチック下地への直貼りを避けているか
- 密閉空間での高W/m施工を避けているか(またはW/mを下げているか)
- 調光器を活用して70〜80%駆動による温度管理を検討しているか
- 施工後30分後にチャンネル表面温度を確認(60℃以下が目安)しているか
LEDテープの放熱設計は「明るさが足りない」「すぐ暗くなった」という施工品質問題の根本原因になります。正しい熱管理で5年・10年の長期安定稼働を実現してください。
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