住宅のファサードや店舗の軒先を光らせる軒天ライン照明は、LEDテープの得意分野です。ただし軒天は雨が直接当たらないのに、吹き込み・巻き上げ・結露・湿気・虫・温度変化には常にさらされるという中途半端な環境で、「雨掛かりしないから非防水でいい」と判断すると銅箔腐食や端部からの浸水で早期に不点灯が起きます。逆にすべてを最高防水にすると材料費と施工手間が過剰になります。本記事では、設置環境の見極め・IP等級の選定・固定方法・電源計画・環境対策を施工業者向けに整理します。
1. 設置環境の見極めとIP等級の選定
同じ「軒天」でも、軒の出寸法・高さ・方角・立地で水のかかり方はまったく違います。「風を伴う雨のときに濡れる可能性があるか」を基準に3段階で考えます。
| 設置環境 | 想定される水掛かり | 推奨IP等級 | 端部処理 |
|---|---|---|---|
| 奥まった軒天・ポーチ天井 (軒の出600mm以上・地上高2.5m以上) |
直接の雨掛かりほぼなし。結露・湿気のみ | IP54以上 | エンドキャップ装着 |
| 軒先寄り・吹きさらしの軒下 (軒の出が浅い・2階以上で風が強い) |
台風・強風時の吹き込みで濡れる | IP65以上 | エンドキャップ+シリコン充填 |
| 海岸近く(塩害地域)・常時多湿 (海岸から2km以内・温泉地・水路沿い) |
塩分を含む湿気・霧が常時付着 | IP67クラス | 端部二重防水+接続部も防水コネクタ |
IP68=万能ではない:IP68は「水没への耐性」であり、屋外の紫外線や温度サイクルへの耐性を保証する等級ではありません。屋外用途では、IP等級に加えて耐候性(UV耐性のあるシリコン押出・充填タイプか)を製品仕様で確認してください。PVCチューブ品は紫外線で黄変・硬化しやすく、屋外南面では劣化が早まります。
2. 製品選定の基準(軒天ライン照明の推奨仕様)
3. 電源(コンバーター)の置き場所 — 3パターンの判断
軒天照明の寿命を左右するのは、実はテープよりも電源の設置環境です。電源は発熱部品で、周囲温度が10℃上がると電解コンデンサの寿命は約半分になります。将来の交換も見据えて「点検できる場所」に置くのが大原則です。
| 設置パターン | メリット | デメリット・条件 | 推奨度 |
|---|---|---|---|
| ① 屋内設置 (小屋裏・天井裏・物入れ・軒裏の点検口内) |
非防水の安価な電源が使える/温度環境が安定/点検・交換が容易 | 屋内からDC配線を外部へ貫通させる経路と防水処理(貫通部シーリング)が必要 | 最優先 |
| ② 軒天内部 (軒天ボード裏の空間・点検口を新設) |
配線距離が最短=電圧降下が最小/外観に出ない | 点検口の新設が必要/夏場の軒裏は高温になりやすく容量余裕が必要 | 有効 |
| ③ 屋外防水ボックス (外壁面・基礎付近にプールボックス設置) |
屋内に入線できない現場でも施工可能/後付けリフォームで有利 | 防水仕様電源または防水BOX+放熱設計が必要/直射日光・南西面は避ける/負荷率60〜70%に抑える | 条件付き |
AC100V側の工事は有資格者で:電源一次側の屋外配線・防水コンセント増設・ボックス内結線は電気工事士の独占業務です。屋外のAC配線はPF管・防水プリカで保護し、ボックス下面から入線(水返し)してください。屋外ボックスの選定・放熱の詳細は屋外用LED電源のBOX収納・防水ガイドを参照してください。
4. 軒の長さ別・電源容量と給電方式の計画例
電源容量は「テープのW/m × 長さ × 余裕率1.25」で計算します。屋外ボックス収納の場合はさらに余裕を見て負荷率60〜70%に抑えます。10W/mのDC24Vテープを例にした計画表です。
| 軒の長さ | 負荷合計 (10W/m) |
必要容量 (×1.25) |
電源の目安 | 給電方式 |
|---|---|---|---|---|
| 5m(玄関ポーチ) | 50W | 63W | 24V 75〜100W ×1台 | 片端給電で可 |
| 10m(住宅正面) | 100W | 125W | 24V 150W ×1台 | 中央給電(5m+5mに分岐)または両端給電 |
| 15m(店舗ファサード) | 150W | 188W | 24V 200W ×1台 または100W ×2台 |
2系統並列(7.5m×2)+給電線2.0sq以上 |
| 25m(L字の建物外周) | 250W | 313W | 24V 150〜200W ×2台(分散配置) | 電源を2箇所に分散し各系統を短くする |
計画のポイント:1系統の連続接続長は製品の最大接続長(多くは5〜10m)以内に必ず収めます。長い軒で電源1台にまとめたくなりますが、電源から遠い系統ほど給電線での電圧降下が効いてくるため、給電線は距離10mを超えるなら2.0〜3.5sqへ太線化するか、電源自体を負荷の近くに分散配置するほうが安定します。詳しい計算は電圧降下の計算と対策ガイドを参照してください。
5. 軒天ならではの環境対策(虫・鳥・塩害・温度)
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対策 1虫の誘引 — 光に集まる虫と巣で汚れる・暗くなる軒下照明は夜間、走光性の虫を集めます。むき出しのテープは虫の死骸・クモの巣で覆われて明るさが落ち、清掃もしにくくなります。対策:乳白カバー付きアルミフレームで面を閉じる/紫外線放射の少ないLED(低UV)+電球色(2700K前後)は青白い光より誘虫性が低い/年1回のカバー清掃を前提に脚立でアクセスできる高さ・位置に計画する。
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対策 2鳥の営巣 — フレームと軒の隙間がスズメ・ハトの巣になる軒天とフレームの間に20mm以上の隙間があると、営巣スペースになります。巣材と糞は美観・衛生の問題に加え、配線かじりのリスクもあります。対策:フレームは軒天面に密着固定し隙間を作らない/入隅の配線スペースはパンチングカバーやシーリングで塞ぐ/既に鳥害のある建物では防鳥ネット・スパイクの計画と合わせて位置を決める。
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対策 3塩害 — 海岸近くでアルミ・端子が腐食する海岸から2km以内では塩分を含む湿気でアルミフレームの白錆、コネクタ端子の緑青、ビスの赤錆が進行します。対策:フレームはアルマイト処理品+ステンレスビス(SUS304以上)を使用/接続はコネクタより半田+収縮チューブ+自己融着テープの多重防護/IP67クラス+端部シリコン充填で開口部を作らない。
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対策 4温度サイクル — 夏60℃・冬-10℃の伸縮で剥がれ・断線西日の当たる軒裏は夏場に60℃近くまで上がり、冬は氷点下まで下がります。この伸縮の繰り返しで両面テープ固定は剥離し、固定されていないテープは接続部に応力がかかり断線します。対策:固定はフレーム+ビスで機械的に行う(粘着のみ禁止)/直線の長い区間は接続部を固定点の直近に置き、応力を接続部にかけない/高温面では10〜20%のデレーティング(W/mを1ランク下げる・調光で常用80%)を見込む。
6. 施工手順の要点
- 現地調査:軒の出・全長・下地材(ケイカル板/木/金属)・点検口の有無・電源経路・雨掛かりの程度を確認する。
- 割付図の作成:カット単位で割り付け、接続部・給電点・電源位置を図面化する。入隅・出隅のコーナー処理位置も決める。
- フレームの取付:アルミフレームを300〜500mmピッチでビス固定。ケイカル板下地は下地材(垂木・野縁)を狙うかボードアンカーを使用する。
- テープの敷設・接続:フレーム内にテープを貼り込み、接続はコネクタまたは半田+収縮チューブ。屋外側の接続部はすべて防水処理する。
- 給電線の敷設:DC側もPF管または軒内隠蔽で保護し、貫通部はシーリング。+−の識別を両端でマーキングする。
- 電源・調光器の設置:点検可能な位置に固定し、一次側はAC結線(有資格者)。タイマー・照度センサー連動の設定を行う。
- 完成検査:全点灯・末端電圧(定格−5%以内)・連続点灯30分後の温度・調光動作を確認し、記録を残して引き渡す。
7. 軒天LEDテープ 選定・施工チェックリスト
- 雨掛かりの程度を現地確認し、IP等級(54/65/67)を環境に合わせて選定した
- 屋外の紫外線に耐える耐候仕様(UV耐性シリコン系)の製品を選んだ
- DC24V・同一ロットで必要m数+予備10%を手配した
- アルミフレーム+ビス固定で計画した(両面テープのみの固定にしていない)
- 電源は点検・交換できる場所(屋内優先)に配置した
- 電源容量は負荷×1.25倍以上(屋外BOX収納なら負荷率60〜70%)で選定した
- 1系統の連続接続長を製品の最大接続長以内に収め、必要なら並列給電にした
- 端部はエンドキャップ+シリコン充填、接続部は防水処理した
- 虫・鳥・塩害の地域リスクを確認し、必要な対策部材を計上した
- 完成検査(全点灯・末端電圧・温度・調光)と記録の段取りをした
8. よくある質問(FAQ)
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