施工概要
客席60席・厨房付きの260㎡居酒屋・ダイニングバーで実施した全館LEDリニューアルの施工記録です。従来の白熱球・蛍光灯混在から、COB 24V LEDテープ一本化・4ゾーン調光制御に切り替えた結果、客単価23%向上・平均滞在時間18%延長・照明関連クレームゼロ・電力54%削減を同時達成しました。
施工前の課題
オープンから11年が経過した店舗は、白熱電球・ハロゲン・蛍光灯が混在し、照度と色温度がゾーンごとに不統一でした。カウンター席は熱源の白熱球でスタッフが夏場に苦しみ、テーブル席は蛍光灯の青白い光が料理の色を損なっている状態でした。
- 白熱球の発熱によるエアコン負荷増大(夏季電気代が冬の2.3倍)
- 蛍光灯の50Hz/60Hzフリッカーで長時間滞在客の眼精疲労クレームが月3〜4件
- ランプ切れが頻繁で週1回以上の交換作業が発生・スタッフ工数を圧迫
- 料理の見た目が「蛍光灯っぽく安っぽく見える」というSNSレビューが散見
- 厨房の照度不足(400lx)で食材の色確認に支障
4ゾーン照明設計
飲食空間の照明は「料理を美しく見せる演色性」と「くつろぎを演出する低色温度・調光」の両立が核心です。本案件では4ゾーンにCOB 24V LEDテープを使い分け、ゾーンごとに専用PWM調光コントローラを設置しました。
| ゾーン | エリア | 色温度 | Ra値 | W/m | 総m数 | 消費電力 | 照度レンジ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Zone A | エントランス・看板 | 3000K | Ra90 | 10W/m | 12m | 120W | 200〜400lx |
| Zone B | カウンター席 | 2700K | Ra90 | 10W/m | 20m | 200W | 50〜300lx(調光) |
| Zone C | テーブル席・半個室 | 2700K | Ra90 | 10W/m | 48m | 480W | 50〜250lx(調光) |
| Zone D | 厨房・バックヤード | 4000K | Ra90 | 12W/m | 28m | 336W | 600〜900lx |
合計:108m / 1,136W(施工前2,470W → 54%削減・年間約64万円コスト減・24時間換算ではなく営業時間14h/日・年間300日で算出)
ゾーン別設計根拠
Zone A — エントランス 3000K
- 用途入口・看板・のれん演出
- 照度200〜400lx
- 色温度3000K(温白色)
- 演色性Ra90
- 特記暖色で「入りやすさ」演出
Zone B — カウンター 2700K調光
- 用途カウンター席・バー演出
- 照度50〜300lx(PWM 15〜100%)
- 色温度2700K(電球色)
- 演色性Ra90
- 特記時間帯で自動ディム・ラストオーダー後30lxへ
Zone C — テーブル席 2700K調光
- 用途客席・半個室
- 照度50〜250lx(PWM 15〜100%)
- 色温度2700K(電球色)
- 演色性Ra90
- 特記食事開始200lx→デザート時100lxへ段階ディム
Zone D — 厨房 4000K高照度
- 用途調理・食材確認・洗浄
- 照度600〜900lx
- 色温度4000K(中性白色)
- 演色性Ra90
- 特記肉・野菜の色確認・衛生管理に必要な高照度
飲食店における演色性Ra値の選定基準
居酒屋・ダイニングバーで最も重要な照明性能は「料理を美味しそうに見せる演色性」です。Ra値が低いと食材の色が不自然になり、食欲減退・客単価低下につながります。
| Ra値 | 特性 | 飲食店用途 | 推奨度 |
|---|---|---|---|
| Ra80 | 一般基準・やや色が浮く | 倉庫型・格安チェーン | △ |
| Ra90 | 商業標準・肉・野菜の赤・緑が鮮明 | 居酒屋・カフェ・ファミレス | ◎ |
| Ra95 | 高演色・ワインのルビー色も正確 | フレンチ・イタリアン・バー | ◎◎ |
| Ra97 | 最高演色・美術館レベル | 高級日本料理・懐石 | 専門家推奨 |
本案件(居酒屋)ではRa90を選定。Ra95との差は約15%のコスト増に対し客観的な差は軽微であり、コストパフォーマンスが最大化するRa90が適正と判断しました。なお厨房は食材の色確認を正確に行うためRa90以上が必須です。
時間帯別調光プログラム(3シーン自動切替)
飲食店照明は「入店時の第一印象」「食事中の演出」「終盤のくつろぎ」で最適照度が異なります。PWM調光コントローラにタイマーを組み合わせ、3段階で自動切替を実装しました。
| シーン | 時間帯 | カウンター(B) | テーブル(C) | 目的 |
|---|---|---|---|---|
| オープニング | 17:00〜18:30 | 250lx(80%) | 200lx(80%) | 明るく入りやすい雰囲気・通りからの視認性 |
| ディナータイム | 18:30〜21:00 | 150lx(50%) | 120lx(50%) | 料理を美しく演出・会話が弾む照度 |
| ラストオーダー | 21:00〜閉店 | 60lx(20%) | 50lx(18%) | お客様が自然に「もう帰ろうか」と感じる照度 |
ラストオーダー後の照度低下により、回転率が平均12分短縮。混雑時の顧客体験向上と経営効率化を両立しました。
省エネ・コスト削減の詳細計算
| 項目 | 施工前 | 施工後 | 削減率 |
|---|---|---|---|
| 総消費電力 | 2,470W | 1,136W | 54%削減 |
| 年間電力消費(14h×300日) | 10,374kWh | 4,771kWh | 5,603kWh削減 |
| 年間電気代(¥28/kWh) | 約290,472円 | 約133,588円 | 約156,884円削減 |
| ランプ交換コスト(年) | 約480,000円 | 約0円(メンテフリー) | 480,000円削減 |
| 合計削減額(年) | 約636,884円(約64万円) | — | |
初期投資回収期間:総工事費約280万円 ÷ 年間削減約64万円 = 約4.4年(LEDテープ寿命50,000時間 ÷ 14h/日 ≒ 9.7年で2回以上回収)
施工・設計上の重要ポイント
調理油煙による汚れ対策
厨房・ホールの境界付近は調理油煙でLEDテープが白濁します。シリコン被覆タイプ(IP65相当)を採用し、年1回の清掃で輝度維持。カバーなしの素テープは6ヶ月で輝度20%低下した実測例があります。
電源ユニット(PSU)の設置場所
PSUを厨房内に設置すると熱・油煙で寿命が1/3以下になります。バックヤード・天井裏など換気が確保された場所に設置し、適切な放熱スペース(周囲10cm以上)を確保してください。
フリッカーによる動画撮影問題の回避
SNS映え重視の飲食店では来客による料理撮影が多発します。DCスイッチング電源+COBテープの組合せはフリッカーフリーで、スマートフォン動画(60fps/240fps)でも縞模様が出ません。蛍光灯はシャッター速度によって縞が出るため要交換。
調光ノイズ対策(ラジオ・BGMへの干渉)
PWM調光はBGMアンプに電磁ノイズが乗る場合があります。対策:①PWM周波数を20kHz以上に設定、②電源ラインとオーディオラインを物理的に分離(最低30cm間隔)、③アンプにフェライトコア(EMIフィルタ)を追加。
使用商品
本施工で使用したCOB 24V LEDテープはLED PRO SHOPの主力商品です。厨房向けIP65防水タイプ・調光対応モデルをゾーン別に使い分けました。
COB 24V LEDテープ(Ra90・2700K/3000K/4000K、IP65防水・調光対応)の仕様・価格は商品ページをご確認ください。
商品ページで仕様を確認するまとめ
居酒屋・ダイニングバーのLED化では「2700K電球色+Ra90+PWM調光」の三本柱が飲食空間の満足度と経営効率を同時に向上させます。本案件の成果である客単価+23%・電力54%削減は、照明設計の最適化だけで実現できる数字です。
特に「時間帯別調光プログラム」は初期投資ゼロで導入可能なオペレーション改善です。既存のLEDでも調光コントローラを後付けするだけで同様の効果が得られます。まずは調光対応のCOB LEDテープへの切り替えを検討してみてください。