食品施設の照明に「IP67」が必要な理由
食品工場・業務用厨房は、一般の商業施設とはまったく異なる過酷な環境です。高圧洗浄機による床・壁の日常洗浄、蒸気・水蒸気の充満、急激な温度変化(加熱ゾーンと冷蔵ゾーンの温度差が40℃以上になることも)――これらの条件を無視して選んだ照明は、数ヶ月で故障し、最悪の場合、漏電や感電のリスクを生みます。
高圧洗浄時に水が浸入し、漏電・ショート・感電事故の原因になります。HACCP制度化(2021年6月施行)以降、食品施設の照明には防水仕様が事実上の必須要件となっています。
LEDテープ照明を食品施設に導入する場合、最低でもIP65(防塵・防水ジェット)、定期的に高圧洗浄が行われるゾーンではIP67(水中30分耐久)以上が必要です。
| IP等級 | 防水レベル | 食品施設での使用可否 | 適用ゾーン |
|---|---|---|---|
| IP44 | 飛沫防止 | ✗ 不可 | 高圧洗浄ゾーンでは使用不可 |
| IP65 | 防塵・防水ジェット | △ 条件付き | 換気エリア・乾燥保管庫 |
| IP67 | 水中30分耐久 | ◎ 推奨 | 加工・洗浄・調理エリア |
| IP68 | 水中連続使用 | ◎ 最高 | 常時湿潤環境・ウォークイン冷蔵 |
食品施設に最適な演色性(Ra値)と色温度
演色性はRa90以上を選ぶ
食品の品質管理では、食材の色で鮮度・品質・異物の有無を判定します。Ra値が低い照明では、肉の変色、野菜の褐変、異物(虫・毛髪・異種食材)が視認しにくくなります。
色温度は用途ゾーンで使い分ける
| ゾーン | 色温度 | 理由 |
|---|---|---|
| 加工・検査ライン | 5000〜6500K | 昼光色で異物を視認しやすい。疲労感は高いが集中力維持 |
| 調理・盛り付けゾーン | 4000〜5000K | 食品の色を自然に見せつつ作業精度を確保 |
| 食材保管・冷蔵庫内 | 4000K | 白色光で食材の状態確認しやすい。熱量ゼロのLEDが必須 |
| 休憩室・更衣室 | 3000〜3500K | 白熱色系でリラックス。疲労回復を促す |
| 原材料倉庫 | 4000〜5000K | 在庫確認・ピッキング精度向上 |
施工事例:420㎡食品加工工場のLEDリニューアル
関東近郊の惣菜製造工場(冷蔵加工・盛り付け・包装・洗浄の4工程)で実施した、蛍光灯からLEDテープ照明への全面リニューアル事例です。
電力設計と電源装置の選定
全ゾーン電力設計まとめ
電圧降下対策(24Vを選ぶ理由)
食品施設では10〜30mの長距離配線が多く、12V電源では末端の電圧降下が顕著になります(10m先で11V台まで低下→輝度ムラ)。24Vシステムなら同じ電流で2倍の電力を供給でき、電圧降下の影響を半減させることができます。
| 電圧 | 最大片側配線長 | 長距離での輝度均一性 | ケーブル断面積 |
|---|---|---|---|
| 12V | 〜5m推奨 | △ ムラが出やすい | 太いケーブルが必要 |
| 24V | 〜10m(両端給電で20m) | ◎ 均一 | 細くても対応可 |
食品検査ラインで「ちらつきゼロ」が重要な理由
蛍光灯は商用電源(50/60Hz)に同期して毎秒100〜120回点滅しています。この点滅が食品コンベアの速度と共鳴すると「ストロボ効果」が発生し、動いているコンベアが止まって見えたり、異物の視認が困難になります。
LED電源装置(ドライバ)の品質によっては、LEDにも点滅が起きることがあります。品質の高いLED電源は高周波PWM(10kHz以上)または定電流直流制御を採用しており、ちらつきを視覚で検出できないレベルに抑えています。
食品検査ラインには、力率0.9以上・高周波PWM対応の電源装置を指定して選定することが重要です。
食品施設でのLEDテープ施工手順
- 素地確認・下地清掃:食品施設の壁・天井はステンレス・塩化ビニル・FRP等が多く、接着剤の密着性が異なります。シリコン系接着剤が適さない素材(ステンレスへのステンレスは熱膨張差で剥離しやすい)はネジ留めアルミフレームを選択。
- アルミフレームの固定:M4〜M5ビスでフレームを固定。壁面の場合はプラスチックアンカーを使用(スチールアンカーは錆リスク)。フレーム内部に水が溜まらないよう、固定位置の最下点に直径3mmの水抜き穴をドリルで明ける。
- テープ配線・接続:食品施設では防水コネクタより半田付け+収縮チューブが信頼性が高い。コネクタを使用する場合は防水型IP67以上のコネクタを使用し、接続後に防水テープで二重保護。
- テープ両端の封止:IP67テープの両端は専用シリコンエンドキャップ+防水シーリング剤で完全封止。封止後24時間の硬化時間を確保してから洗浄環境にさらす。
- 電源装置の設置:電源装置は必ず洗浄エリア外(温度10℃以上・飛沫のかからない位置)に設置。やむを得ず洗浄エリア内に設置する場合はIP65以上の電源ボックスに収納。
- 動作確認・照度測定:全点灯後に照度計で各作業台の照度(目標500〜1,000 lx)を計測し記録。HACCP記録として保管。
- HACCP衛生管理記録の更新:照明器具の交換記録・定期点検スケジュールをHACCP衛生管理計画書に記載。破損時の交換手順(破片の食品への混入防止措置を含む)を明記。
冷蔵庫・冷凍庫内設置の注意点
- シリコン被覆テープ:−20℃対応品(シリコン素材は通常低温に強いが、メーカー動作温度範囲を確認)
- 接着剤・両面テープ:低温対応品(冷蔵庫内での3M VHB使用は低温で粘着力低下のため不可)
- 電源装置:冷蔵庫外に設置し、コードを冷蔵庫壁の貫通部から引き込む(貫通部はウレタンフォームで断熱・防水)
- コンデンサ等の電子部品:低温での容量変化を考慮した電源装置を選択(産業用グレード推奨)
- 結露対策:庫内外の温度差で配線外部が結露することがある。結露水が流れ込まない配線経路を設計
- 扉の開閉による温度衝撃:扉付近のテープ・ケーブルは熱収縮を繰り返すため、固定点を増やしてたわみを許容する
食品施設LED照明の定期メンテナンス計画
- 点灯確認(全ゾーン)
- フレーム・テープ外観目視
- 破損・亀裂の有無確認
- 照度測定(基準値との比較)
- 接続部・コネクタ点検
- 電源装置の温度確認
- HACCP記録への記入
- テープ接着状態確認
- シーリング材の劣化確認
- アルミフレームのネジ増し締め
- 電源装置内部清掃
- 輝度維持率の評価(L70到達前の予防交換計画)
- シーリング材の全面打ち直し
- 電源装置の予防交換
蛍光灯からのリプレース:電気代削減効果
今回の事例工場では、蛍光灯40W器具×52台からLEDテープ照明へのリプレースを実施。下記は概算の試算結果です。
| 項目 | 蛍光灯(従来) | LEDテープ(導入後) |
|---|---|---|
| 総消費電力 | 2,080W(40W×52台) | 874W |
| 削減電力 | 1,206W(約58%削減) | |
| 年間稼働時間 | 4,500時間(16h×300日) | |
| 年間電力削減量 | 約5,427kWh | |
| 年間電気代削減(¥30/kWh) | 約163,000円/年 | |
| 照明器具交換コスト(ランプ・安定器) | 年間約60,000円 | ほぼゼロ(LED定格5万時間) |
| 維持コスト削減 | 約60,000円/年 | |
| 年間総削減効果 | 約223,000円/年 | |
初期投資(テープ・フレーム・電源・施工費の合計)を仮に100万円とした場合、回収期間は約4〜5年。LED製品の実使用寿命は7〜10年程度が見込まれるため、回収後も3〜5年のプラス収益期間があります。
まとめ:食品施設LED照明選定の5原則
- IP67以上を最低基準に:高圧洗浄・飛沫・薬品消毒に耐える封止性能を確保する
- Ra90以上の高演色性:食材の色識別・異物検出精度を確保する
- 24Vシステムで電圧降下を制御:長距離配線でも輝度均一性を維持する
- ちらつきゼロ(高周波PWM)の電源選定:コンベアラインでのストロボ効果を防ぐ
- ゾーン独立回路で安全・メンテ性を確保:部分洗浄中も他ゾーンの照明を維持し、異常時の即座遮断を可能にする
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